最新記事
遺伝子

認知機能が高い人は、眼鏡が必要となる遺伝子を持つことが明らかに

2018年6月5日(火)15時00分
松岡由希子

skynesher-iStock

眼鏡をかけている人は、どこか知的な雰囲気が漂うものだが、このほど、遺伝子学の観点から「眼鏡をかけている人はそうでない人に比べて知性が高い」ことが明らかとなった。

イギリスのエジンバラ大学の研究プロジェクトは、一般的な認知機能と視力や寿命といった健康にまつわる様々な要素との間に遺伝子的な関連があることを突き止め、2018年5月29日、その研究論文をオンライン学術メディア「ネイチャーコミュニケーションズ」で発表した。

認知機能が高い人は、28%高い確率で、眼鏡が必要な遺伝子を持つ

これによると、一般的な認知機能と眼鏡をかけていることには正の遺伝相関が認められ、一般的な認知機能が高い人は、そうでない人と比べ、28%高い確率で、眼鏡が必要となる遺伝子を持つことが示されている。

研究プロジェクトでは、CHARGE(ゲノム疫学心臓・老化研究コホート)、COGENT(認知ゲノミクスコンソーシアム)およびイギリスのバイオバンクに登録されている16歳から102歳までの30万486人を対象に、認知データと遺伝子データを統合し、一般的な認知機能と関連のある148の遺伝子座を発見した。これらの遺伝子座は、身長や体重といった身体的特質や、肺がんやクローン病などの医学的特質、統合失調症や自閉症をはじめとする精神医学的特質と関連している。

さらに、研究プロジェクトでは、一般的な認知機能と健康にまつわる52の特質との遺伝相関を分析。その結果、36の特質において一般的な認知機能との間に顕著な遺伝相関が認められた。これによると、一般的な認知機能が高いほど、近視になりやすい一方、遠視にはなりにくく、眼鏡もしくはコンタクトレンズを利用しており、握力が強く、高血圧や心臓発作、狭心症、肺がん、変形性関節症にかかりづらく、抑うつ障害にもなりづらいという。

近視と知性との研究はこれまでも

近視と知性との関連については、すでにいくつかの研究で明らかになっている。1988年に発表された研究論文によると、デンマーク在住の18歳男性1万5834人のうち37.5%にあたる5943人が近視で、試験の点数が大幅に高く、教育レベルも高かった。

また、2015年に公開された双生児初期発達研究(TEDS)にまつわるプロジェクトでも、知能指数(IQ)と近視との遺伝子的多面発現を示す結果が出ている。

一般的な認知機能と遺伝子との関連に着目した今回の研究結果は、めがねをかけていることと知性との相関関係にとどまらず、ヒトの認知機能のメカニズムを遺伝子学の観点から探るうえでも、興味深いものといえるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、ホンダとの統合協議を白紙に 取締役会が方針確

ワールド

「ガザ所有」のトランプ発言、国際社会が反発 中東の

ビジネス

EU、Temu・SHEINに販売責任 安価で危険な

ビジネス

独プラント・設備受注、昨年8%減 2年連続のマイナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 5
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 8
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 9
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 10
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中