最新記事

宇宙

スペースXの最新鋭ロケット 飛行機のように飛ばせるロケットへ大きく前進

2018年5月16日(水)17時50分
鳥嶋真也

また、打ち上げごとにかかる時間も、従来の数か月から24時間にまで短縮できるなど、まさに飛行機のような運用を目指している。

しかし、100回の再使用ができるからといって、すぐに打ち上げコストが100分の1にまで下がるわけではない。回収後の検査や消耗した部品の交換など、再使用するためのコストが別途かかるため、そのコストをどれだけ小さくできるかが鍵になる。

また、再使用することによって、信頼性が低下する恐れもある。ロケットは他の乗り物より過酷な環境にさらされるため、機体にかかる負担が大きく、打ち上げを重ねるごとに機体に負担が蓄積し、損傷することもある。それが、これまで飛行機のように何度も飛ばせるロケットが実現しなかった理由のひとつでもある。

だが、マスク氏はそうした不安視する声を一蹴する。打ち上げ前の記者会見では「ブロック5の打ち上げにかかるコストは、いずれ500万ドルから600万ドルを下回るだろう」、「いずれ顧客は皆、飛行済みの"実績のあるロケット"を使いたがるようになるだろう」と語り、自信を見せた。

space003.jpg

打ち上げに向けた準備中のファルコン9 ブロック5 (C) SpaceX


ブロック5のもうひとつの使命

スペースXがブロック5を開発した理由にはもうひとつ、宇宙飛行士を乗せた有人飛行を行うという目的もある。

現在同社は、有人宇宙船「ドラゴン2」の開発を進めており、完成すれば国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送や、宇宙旅行などに使うことを計画している。

これまでのファルコン9は、無人の衛星を打ち上げるためのロケットであり、人を乗せて打ち上げるには安全性の点で課題があった。そこでブロック5では、宇宙飛行士を乗せるために、NASAの定める基準に合致するよう、部品や設計が見直されている。これにより、マスク氏は「史上最も信頼性の高いロケットになった」と豪語する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中