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中国軍事

南シナ海の支配権は事実上中国のもの──核搭載可能な爆撃機で演習

2018年5月21日(月)19時00分
デービッド・ブレナン

抗日戦勝70周年へ向けて編隊飛行の練習を行う中国空軍の爆撃機(2015年、北京郊外で)Jason Lee-REUTERS

<南シナ海での「戦闘」を想定した人工島での離発着訓練はアメリカや周辺諸国に向けたメッセージ>

中国は南シナ海に建設した人工島の一部に、核攻撃が可能な爆撃機を初めて展開させた。これは周辺諸国、特にアメリカに対する「この海域の支配権は中国にある」という警告だ。

ロイター通信によれば、中国空軍は5月18日、「南シナ海での戦闘」を想定した演習の一環として、核搭載可能なH6K爆撃機を複数の島や環礁に着陸させたと発表した。

発表によれば演習は「いつ何時でも中国の全領土に到達し、全方位で攻撃を行う能力を向上させる」ためのもの。アメリカや周辺諸国との対立の火種になっている島々で爆撃機を離発着させる訓練も行われた。艦艇を標的とした攻撃の模擬訓練も行われた。

南シナ海では、中国の他にベトナム、フィリピン、台湾、ブルネイ、マレーシアが領有権を主張している。豊かな漁場や重要な航路があり、地下資源も眠るといわれるこの海域で、中国は周辺国やアメリカの反対にもかかわらずいくつもの人工島を作って軍事施設を建設している。

中国による支配の「既成事実化」

これまでアメリカは、南シナ海は国際水域であると主張し、米軍の艦船や航空機による「航行の自由」作戦を展開してきた。島々の造成や軍事施設の建設の目的はあくまでも防衛だと中国は主張しているが、そのプレゼンスは中国による南シナ海支配の既成事実化につながっている。

島々では要塞化が徐々に進み、ミサイルや電子戦システム、そして軍用機が配備されるようになった。一部の島には3000メートルの滑走路や戦闘機の格納庫、武器弾薬を保管する掩蔽壕や兵舎、軍用艦のための水深の深い桟橋もある。

核搭載可能な爆撃機を格納する施設も以前から存在していたが、今回の訓練はアメリカや東南アジア諸国に対し、南シナ海が中国空軍の活動範囲内であることを誇示している。H6Kの航続距離は約6000キロにおよぶ。

空軍の報道発表では演習が「南シナ海での戦闘」を想定したものだとまで踏み込んで述べている。またBBCによれば、報道発表には「(演習は)われわれの勇気を高め、真の戦争における能力を高めてくれる」という H6Kのパイロットの言葉も引用されている。

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