最新記事

火星探査

火星で地震は起きているのか? 新型火星探査機が解く二つの大きなナゾ

2018年5月10日(木)18時30分
鳥嶋真也

インサイトはさまざまな観測装置を駆使して、火星の内部構造や熱、小さな動きなどを調べる


火星のバイタルサインからわかること

そしてもうひとつが、火星がどのようにしてできて、そして進化してきたのかということである。

火星は地球や月と同じ材料からできたと考えられているが、まだ確かな証拠はない。そもそも、火星の内部がどうなっているかもわかっていない。

そこで地震計を使い、火星の内部を伝わる揺れの波の伝わり方を調べることで、火星の内部にどんな物質がどれだけあるのかを推定することができる。また、温度計を使って、火星の内部から流れてくる温度を正確に測れば、内部でどのような活動が起こっているのかがわかる。これらのデータを組み合わせることで、火星内部についてより詳細かつ正確に推定することができる。

これらのことがわかれば、いまから約45億年前に火星ができたときに、どのような姿かたちをしていたのか、そしてどういう進化の歴史を歩んできたのかがわかる。火星の内部には、その誕生から現在までの痕跡が残っているのである。

さらに、インサイトによる探査でわかるのは、火星のことだけにとどまらない。NASAの科学ミッションの責任者を務めるThomas Zurbuchen氏はインサイトは火星についてだけでなく、地球や月のような他の岩石でできた惑星や、他の恒星のまわりを回る何千もの系外惑星についての理解も深めることになるだろう」と「期待を語る

insight003.jpg

インサイトによる探査で、火星の起源と歴史だけでなく、地球や月についても、さらに太陽系外惑星についてもより深く知ることができるかもしれない (C) NASA/JPL-CALTECH

火星到着は秋、夏には火星と地球が大接近

打ち上げ後のインサイトの状態は正常で、火星に向けて順調に飛行を続けている。

インサイトはこれから宇宙を約6か月間にわたって飛行し、今年の11月26日に火星に着陸する。火星着陸は難しく、火星大気への突入から着陸までにかかる時間から「恐怖の7分間」とも呼ばれる。NASAは探査機の運用室からの中継を予定しているので、当日は関係者とともに見守ることもできる。無事に着陸すれば、観測機器を展開して探査を開始。探査期間は約2年(火星の時間では約1年)が予定されている。

折しも、今年7月31日には、火星と地球の距離が接近する「火星大接近」が起こる。2003年以来、15年ぶりに最も近づくとあって、大勢の人が夜空を見上げる機会になろう。

この夏、夜空に赤く輝く火星を見ながら、火星の歴史と、その内部に潜む謎に挑もうとするインサイトに、想いを馳せるのも一興かもしれない。

insight004.jpg

今年7月31日には、2003年以来、15年ぶりに火星と地球とが大接近する (C) NASA


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ関税でナイキなどスポーツ用品会社

ビジネス

中国自動車ショー、開催権巡り政府スポンサー対立 出

ビジネス

午後3時のドルは149円後半へ小幅高、米相互関税警

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中