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技能実習生 残酷物語ドイツ版「技能実習生」、ガストアルバイター制度の重い教訓
ノルトライン・ウェストファーレン州の炭鉱で働くトルコ人労働者(1990年頃) HENNING CHRISTOPH-ULLSTEIN BILD/GETTY IMAGES
<日本の技能実習生制度が現代の「奴隷制」を生んでいる。一方、外国人労働者を短期間だけ体よく利用した先例であるドイツが払ったツケとは? 本誌4月24日号「技能実習生 残酷物語」より>
ドイツはアメリカに次ぐ移民受け入れ大国だ。15年の移民数は全人口の約14%に当たる1200 万人に上っている。
そもそもドイツは自国を、移民受け入れに失敗した国と見なしてきた。その元凶は、50年代に西ドイツで始まった「ガストアルバイター」という制度だ。「ガスト」はドイツ語の「客」の意味で、長期滞在しない出稼ぎ労働者をイタリアやトルコなど外国から受け入れるものだった。
ガストアルバイターたちは西ドイツの戦後復興を建設現場や工場で下支えしたが、73年の石油ショックで募集は停止に。その後、彼らの一部は労働契約が切れても帰国せず、母国にいる家族をより豊かなドイツに呼び寄せ始めた。
経済成長が続く間は西ドイツ国民と移民の不信感は目立たなかったが、89年の東西ドイツ統一による財政負担と経済悪化で両者の隔絶が顕在化。かつてのガストアルバイターだったトルコ人が集中して住む地域が孤立化し、ドイツ国民との溝は広がった。
相互不信の原因の1つは、西ドイツ政府がガストアルバイターは「短期労働者だから」と考え、ドイツ語教育などの十分な統合政策を取らなかった点にあるだろう。
労働力不足解消のための05年の移民法改正で、ドイツ政府は遅ればせながら移民にドイツ語研修を義務付けた。しかしトルコ人ばかりが住む地域で暮らす移民たちにとっては、ドイツ語が話せなくても暮らしに不自由はない。このため、今さらお金を払ってまでして真面目に学ぶ必要性を感じていない人たちも多い。
ドイツは教育と職業のつながりが強く、職業資格が重視される資格社会。ドイツ語習得という最初の一歩でつまずいた移民はそのまま社会からドロップアウトしかねない。社会の底辺にいる移民たちは、ドイツ人より低い社会保障とドイツ人より高い貧困率にあえぐ。
かつて自らの経済的利益のために他国の労働者を体よく利用したドイツが近年、人道目的で大量の難民を受け入れたのは罪滅ぼしの意識があるのかもしれない。
【参考記事】細野豪志「技能実習生制度を正当化はしていない」
<ニューズウィーク日本版4月17日発売号(2018年4月24日号)は「技能実習生 残酷物語」特集。アジアの若者に日本の技術を伝え、労働力不足も解消する「理想の制度」のはずが、なぜ人権侵害が横行する「奴隷制」になったのか。気鋭のルポライターが使い捨て外国人労働者の理不尽な現実と、新たな変化を描く。この記事は特集より>