最新記事

惑星探査

NASAの新型宇宙望遠鏡が打ち上げに成功 「もうひとつの地球」を探す旅へ

2018年4月27日(金)15時15分
鳥嶋真也

さらに近く、たくさんの系外惑星を探すTESS

このケプラーの成功を受けて、NASAとマサチューセッツ工科大学(MIT)などが共同で開発した新しい望遠鏡が「TESS」である。

宇宙のある一点に集中にして「狭く深く」観測したケプラーとは異なり、TESSはほぼ全天を「広く浅く」観測する。観測できる恒星の数は20万個以上にものぼり、ケプラーよりもさらに多くの数の系外惑星を発見できると期待されている。

発見数が多くなれば、それだけ系外惑星について深く知ることができ、その中にもうひとつの地球のような惑星が含まれている確率も増すことになる。

TESS計画に参加するNASAの科学者スティーブン・ラインハート氏は、「TESSが発見する系外惑星たちは、今後何十年にもわたって利用される、素晴らしい研究材料になるでしょう。系外惑星研究の新たな時代の始まりです」と期待を語る


次世代望遠鏡の準備も進む

もっとも、TESSの観測だけでは、その系外惑星がどのような環境をもっているのか、地球のような惑星なのかははっきりとわからない。

TESS計画に参加するMITのナタリー・ゲレロ氏は「TESSの観測は、まるで宝の地図を作るようなものです」と語る。その地図をもとに、そのお宝がどんなものかを調べるのは、他の望遠鏡の役目である。

TESSはケプラーよりも、地球から30〜300光年と比較的近く、そして明るく光る恒星を調べられるという特徴ももつ。地球に近くて明るいということは、それだけ地上にある望遠鏡などで調べやすい。そこで、TESSのデータをもとに、世界各地にある望遠鏡がそこに目を向けることで、TESSが見つけたものが本当に系外惑星なのかという確認に始まり、その惑星の大きさや質量、密度、組成なども正確に知ることができる。

こうした観測に参加するのは地上の望遠鏡だけではない。NASAは2020年ごろの打ち上げを目指して、宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の開発を進めている。TESSが作った"宝の地図"をもとに観測することで、今まで見たことのない、系外惑星の新たな姿が明らかになるかもしれない。NASAではさらに、新しい望遠鏡の研究も進んでいる。

もしかしたらそう遠くないうちに、私たち地球人がこの宇宙でひとりぼっちなのかという謎の答えの、手がかりが見つかるかもしれない。そしていつの日か、TESSが見つけた系外惑星に向けて旅立つ日も来るだろう。

nasa004.jpg

NASAが開発中の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の想像図。TESSのデータをもとに観測することで、今まで見たことのない系外惑星の新たな姿が明らかになるかもしれない (C) NASA/Northrop Grumman

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中