最新記事

雇用

就職氷河期にキャリアを奪われた「ロスジェネ」の悲劇

2018年3月22日(木)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

現実に近い形に補正した就職率で見ても、現在はバブル期に匹敵する高さであることが分かる。なお最近の統計では、正規職員と非正規職員に分けて就職者が計上されているので、正社員に限定した就職率(正規就職率)も出せる。大学以外の学校や、細かい専攻別の数値も計算できる。正社員就職率が高いのはどの学校(専攻)か。<表1>を見て欲しい。

maita180322-chart02.jpg

2017年春の正規就職率は高校が75.9%、短大が82.9%、高専が96.7%、大学が84.6%、大学院修士課程が82.8%となる。高専は実践的な職業教育を行う5年制の高等教育機関で産業界からの評価が高い。

正規就職率は専攻によっても異なる。大学と大学院を比べると、理系の専攻(理学、工学、農学)は大学院のほうが高い。文系は逆で、人文科学系の正規就職率は大学が81.3%なのに対し、大学院は47.2%と大きく低下する。大学院進学のベネフィットは、文系か理系かによって違っている。

なお高校の専門学科が健闘しているのが注目される。90%超の黄色マークが多くついている(工業科と水産科は95%以上)。農林漁業、建設、販売、介護といった、社会の根幹を支える職業の需要が高まっているためだろう。成人年齢を20歳から18歳に下げる法改正が議論されているが、18歳時点での自立をもっと推奨してもいいのではないか。大学等は、必要を感じた時に後から行けるようにすればいい(リカレント教育の普及)。

筆者は、就職率がどん底の氷河期に大学を出た、いわゆる「ロストジェネレーション」だ(<図1>参照)。新卒時の正規就職がかなわず非正規雇用に滞留し、キャリアや昇給が進まなかった人が多い。この世代は今40代になり、子どもがあと数年で高校・大学の進学年齢に達する。この「ロスジェネ・ジュニア」の子どもたちの間で、親世代の経済格差とリンクした「教育格差」がより深刻化する心配が出てきている。

<資料:文科省『学校基本調査』

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中