最新記事

エネルギー

【写真特集】日本にちりばめられた太陽光発電

2018年2月27日(火)18時40分
Photographs by JAMEY STILLINGS

鴨川みらいソーラー太陽光発電所(千葉県鴨川市)は東京ドーム約8個分の面積に広がる

<限られた土地と水を再利用する伝統がある日本では、再生エネルギー施設が都市や農村の複雑に入り組んだ場所に設置されている>

日本でも石炭や石油などの化石燃料や原子力による発電に代わるものとして、再生可能エネルギーの発電所が増えている。しかしその設置方法には、日本ならではの特徴がある。

数千年にわたる日本の歴史と文化に根付いているのは、限られた土地と水を再利用し、さまざまな用途で使うという伝統だ。その流れが、再生エネルギーの開発にも生かされている。

私は2010年から、ヘリコプターや小型機を使ってアメリカ西部の広大な砂漠に造られた大規模な再生可能エネルギー事業を写真に記録してきた。それら太陽熱発電や風力発電の施設は一般的に、設備容量は100~550メガワットで、人が住んでいないか、人口の少ない土地に建てられている。

日本の国土面積の25倍、人口密度は10分の1というアメリカでは、再生可能エネルギー施設が都市部や農業地帯に入り込むことはない。

日本では対照的に、農村部と都市部が複雑に入り組む地形に施設を置かなければならない。それらの施設は都市や郊外、商業地域、森林などに、独特で感動的とも言える形でちりばめられている。太陽光発電所はアメリカのものより小規模で、しばしば水田や温室、住宅地などに隣接。かつての土砂採取場やゴルフコース、人工島に建てられたり、池や貯水池の水面に浮かべられたりすることもある。

特に水面に浮かべる方法は、土地の値段が高い日本では強みになる。設置が盛んなのは、池や貯水池の数が多い兵庫県だ。水上の太陽光発電所なら整地が要らず、地震にも強い。水の蒸発冷却効果で効率的に電気を作ることができるし、貯水の蒸発量や藻類の異常な発生を減らす効果もある。

16年後半には、日本の電力総量の14%を再生可能エネルギーによる発電が占めた。水力発電の割合が最大で、太陽光は全電力需要の5%を担っている。将来的には、太陽光のほか洋上風力発電、潮力発電、地熱発電などが、化石燃料による発電への依存を大きく減らすだろう。

日本各地の太陽光発電所を空から捉えたこれらの写真から、再生可能エネルギーの大きな可能性が見えてこないだろうか。われわれが先を見通して気候変動の問題に積極的に取り組むことで、未来の世代のために持続可能な社会を築くことができる。


ppsolar02.jpg

冷却効果が発電効果を高める水上設置型で世界最大規模の兵庫・高岡西水上メガソーラー発電所(兵庫県加東市)


ppsolar03.jpg

那須南エコファーム太陽光発電所(栃木県那須郡)はゴルフ場跡地を利用している


ppsolar04.jpg

臨海部の埋め立て地に建設された扇島太陽光発電所(神奈川県川崎市)は塩分による腐食に強い素材を採用

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

コンゴ民主共和国と反政府勢力、枠組み合意に署名

ワールド

米中レアアース合意、感謝祭までに「実現する見込み」

ビジネス

グーグル、米テキサス州に3つのデータセンター開設

ワールド

インド、デリーの車爆発事件でカシミール住民逮捕
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中