最新記事

ミャンマー

ロヒンギャの惨劇 ミャンマー住民にどう焼かれ、強奪され、殺害されたか

2018年2月13日(火)11時14分


政府側は軍の作戦を擁護

ロイターが入手したこれらの証言や情報について、ミャンマー政府はどう反応しているのか。

スポークスマンであるZaw Htayはロイターに対し、「人権侵害の申し立てがあることは否定しない。そして、全てを否定してもいない」とし、もし不法行為について「十分かつ信頼できる一次証拠があれば、政府は調査を行う」と語った。「そして、証拠に間違いがなく、暴力があったことが分かれば、我々は現行法に従って必要な行動を取る」と述べた。

インディン村のロヒンギャ集落を「浄化」するよう命令を受けたという武装警官たちの証言については、「証明が必要だ。内務省と警察当局に聞かなければならない」と返答。武装警官たちによる略奪に関しては、警察が捜査するだろうと語った。

同スポークスマンは、仏教徒村民たちがロヒンギャたちの住宅を焼き討ちしたとの情報には驚いた表情で、「いくつも様々な異なった申し立てがあるが、誰がそうしたのかを証明することが必要だ。今の状況下では、それは非常に難しい」と付け加えた。

一方、同氏はラカイン地域における軍の作戦を擁護した。「国際社会は誰が最初にテロ攻撃を仕掛けたのか理解すべきだ。もし、そうしたテロ攻撃が欧州各国や米国で、例えばロンドン、ニューヨーク、ワシントンで起きたら、メディアは何と言うだろうか」。

隣人に牙をむく隣人

一連の出来事は昨年8月25日、ロヒンギャの反政府集団がラカイン州北部にある警察署と軍の基地に対して行った襲撃から始まった。身の危険を感じたインディン村の数百人の仏教徒村民たちは修道院に逃げ込んだ。8月27日、ミャンマーの第33軽歩兵部隊およそ80人が同村に到着した。

村の5人の仏教徒によると、部隊を統率する兵士の1人は到着後、彼らに対し、治安作戦に参加することもできると持ちかけた。実際に仏教徒の「治安グループ」から名乗りを上げる者が出たと言う。

その後の数日間で、兵士、警官、仏教徒村民たちは同村のロヒンギャたちが住む家のほとんどに放火した、と10人以上の仏教徒住民がロイターに証言した。

警官の1人は、ロヒンギャが住む地区へ「出かけて浄化する」よう司令官から口頭で命令を受け、放火しろと言う意味で受け止めたと話した。インディンの北にあるいくつかの村に何度か襲撃を仕掛けたという別の警官もいた。その警官とインディンの仏教徒行政官であるMaung Thein Chayによると、こうした治安部隊は村人たちに紛れ込めるよう民間人のシャツを着ていたという。

ロヒンギャたちがインディン村から逃れた後に起きた略奪について、仏教徒たちがニワトリやヤギなど奪う一方、オートバイや畜牛といった価値の高い物品は第8治安警察隊の隊長が集め、売り払ったとの証言もあった。この隊長であるThant Zin Ooは、ロイターの電話取材に対し、コメントしなかったが、警察の広報を務めるMyo Thu Soe大佐は、略奪があったかどうか捜査すると話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中