最新記事

ミャンマー

ロヒンギャの惨劇 ミャンマー住民にどう焼かれ、強奪され、殺害されたか

2018年2月13日(火)11時14分

2月9日、昨年9月にミャンマーのラカイン州インディン村で拘束された10人のロヒンギャの男たちは、すぐそばで浅い墓穴を掘る隣人の仏教徒たちを見つめていた。拘束からまもなく、彼ら10人の遺体がその穴に横たわった。写真は殺害された10人のロヒンギャたち。ロイターは仏教徒の村民から写真を入手。複数の目撃者が写真に間違いがないと確認した。提供写真(2018年 ロイター)

縛られ、拘束された10人のロヒンギャの男たちは、すぐそばで浅い墓穴を掘る隣人の仏教徒たちを見つめていた。それからまもなく、昨年9月2日朝、彼ら10人の遺体がその穴に横たわった。そのうちの2人を切り殺したのは仏教徒たち。残る8人はミャンマー軍によって射殺されたと、穴を掘ったグループの2人がロイターに証言した。

ミャンマーで起きたイスラム系少数民族ロヒンギャの惨劇。「ひとつの墓穴に10人を入れた」。同国ラカイン州インディン村にある仏教徒集落の退役兵士、Soe Chayはそう語り、同日の事件で自ら墓穴掘りに加わり、殺害を目撃したことを認めた。

彼によれば、兵士たちは、拘束したロヒンギャ1人に2、3発の銃弾を打ち込んだ。「埋められるとき、数人からはまだうめき声が聞こえていた。他はすでに死んでいた」と彼は話した。

終りの見えない「浄化作戦」

ミャンマーの西の端にあるラカイン州の北部では、ロヒンギャたちに対する暴力行為が広範囲に行われている、と隣国バングラデシュに逃げ込んだロヒンギャ難民や人権擁護団体は訴える。海岸沿いの村インディンで起きた虐殺事件は、暴力的な民族対立の悲惨さを雄弁に物語っている。

昨年8月以降、自分たちの村を脱出、国境を越えてバングラデシュに避難したミャンマーのロヒンギャ住民は69万人近くに達する。インディン村にはかつて6000人のロヒンギャたちが住んでいたが、10月以降、残っているものは誰もいない。

およそ5300万人の人口を持つミャンマーは、国民の圧倒的多数が仏教徒だ。イスラム系住民であるロヒンギャたちは、同政府軍が自分たちを抹殺するため、放火、暴行、殺戮(さつりく)を続けていると訴えている。

国連はこれまでもミャンマー軍が虐殺を行っていると非難し、米国政府は同国での民族浄化を制止する行動を呼びかけている。一方、ミャンマー側はこうした「浄化作戦」はロヒンギャ反政府勢力による攻撃に対する合法的な対抗策だと繰り返している。

ロヒンギャたちにとって、ラカイン地域はこれまで何世紀にもわたり自分たちが住み続けてきた場所だった。しかし、ミャンマー人の多くは、彼らをバングラデシュからやってきたイスラム系の招かれざる移民とみなし、軍はロヒンギャたちを「ベンガル人」と呼ぶ。

こうした対立はここ何年かの間に激しさを増し、ミャンマー政府は10万人以上のロヒンギャたちを食糧も医薬品も教育も十分に提供されないキャンプに閉じ込めてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中