最新記事

米朝関係

緊張緩和でも消えぬ米朝戦争の懸念 トランプ政権にくすぶる先制攻撃の声

2018年1月16日(火)17時32分

北朝鮮が新たな実験を計画しているという情報機関の「確度の高い」予測をもとに、同国の核やミサイル施設に対して爆撃を行うことが選択肢の1つにある、と米高官は語った。北朝鮮がICBMに燃料を注入しているという証拠が、このような攻撃に引き金になると考えられるという。もう一つの選択肢は、北朝鮮の実験を受けて、ICBMや核施設に対する報復攻撃を行うことがあると指摘する。

複数の高官によると、マクマスター大統領補佐官は、米国の攻撃は1つの標的に限定され、正恩政権の転覆を狙った作戦の第1段階ではないことを中国に請け合えば、全面戦争は避けられると主張したという。

中国の政治専門家は、たとえ限定的な攻撃であっても中国は反対していると指摘。しかし、カーネギー清華グローバル政策センター(北京)の北朝鮮専門家Zhao Tong氏は、もし北朝鮮が核を搭載したICBMを太平洋に発射したり、グアムに向けてミサイルを発射したりすれば、中国も態度を変える可能性があると話す。

トランプ政権による軍事的選択肢を巡る議論は、中国とロシアを追い込んで北朝鮮への圧力をかけ続けさせるための「心理ゲーム」だと中国は受け止めているが、同国は万が一に備えた危機対応準備も進めていると、Zhao氏は言う。「もしトランプ大統領が本当は軍事攻撃を真剣に考えていなかったとしても、計算ミスや、北朝鮮が過剰反応する危険は常にある」

韓国政府は米軍による攻撃の可能性は低いと考えている、と同国の政府高官は話す。

「トランプ大統領は、その結果、何が起こるかを知っている。いろんな省や部署から、攻撃がもたらす損害や犠牲者数について説明を受けている」と、この高官は話した。

米国務省では、軍事行動は、それ自体が抱える巨大なリスクに見合わないとの見方が大勢だという。とはいえ、「われわれの国益にかなう利益を、われわれが許容できる範囲のコストで達成できる軍事オプションもある」とある政府高官は語った。

米情報機関は、米政府が自身の転覆を狙っており、それを防ぐには核保有しかないと正恩氏が信じているとの見方で一致している。

ある日本の与党議員は、核保有国として認められたい北朝鮮と、それを拒否する米国との距離が、南北会談で縮まることはないと考えていると話した。「五輪の後が、危ないかもしれない」と同議員は語った。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

John Walcott and David Brunnstrom

[ワシントン 11日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、務安空港のコンクリート構造物撤去へ 旅客機事

ワールド

中国の太陽光・風力発電の新規導入容量、24年も記録

ワールド

トランプ政権、沿岸警備隊の女性トップ解任 DEI政

ワールド

トランプ氏、多様性政策撤廃の動き加速 民間部門の調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 8
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中