最新記事

宇宙

火星の土壌でミミズが生存・繁殖できる可能性:オランダの研究者が成功

2017年12月4日(月)17時50分
高森郁哉

火星の土壌を模倣した研究室の土で、ミミズの繁殖に成功した jlmcloughlin-iStock

オランダのワーゲニンゲン大学は先月、火星の土壌を模倣した研究室の土で、ミミズの繁殖に成功したと発表した。火星のテラフォーミング(人間が居住できる環境に変えること)に役立つ可能性がある。

実験の方法と意義

同大学の生物学者、ビーガー・バーメリンク博士が2013年から行っている研究の一環。同氏はまず、米航空宇宙局(NASA)から入手した火星の模擬土に、豚の排泄物のたい肥を加え、そこにルッコラの種を植えた。ルッコラが発芽した後に、成長したミミズ数匹を入れて観察を続けた。

01-earthworms.jpg

Wieger Wamelink/Wageningen University & Research

ミミズはこの模擬土の環境で生存できただけでなく、2匹の子ミミズが生まれていることが確認されたという(ちなみにミミズは雌雄同体で、成熟した2匹が精子を交換して受精し、筒状の卵包の中に幼生を産む)。

ミミズは枯れ草などの有機物を食べ、バクテリアのはたらきにより有機物を窒素、リン、カリウムに分解して排出する。これらの化合物は植物の養分になる。

また、ミミズは土中を移動する際に穴を掘るが、この穴が空気と水の通りを良くするので、植物の生育を助けるという。

したがって、火星や月など地球以外の天体の土壌で、ミミズが生存し繁殖することができれば、その土壌改善に役立つと期待されている。

研究の課題

ワーゲニンゲン大学の実験では、火星の土壌環境を正確に模倣したわけではない。まず、NASAの模擬土には、火星の土に存在する高濃度の過塩素酸塩が含まれていない。過塩素酸塩は人体に有毒な物質だ。

また、火星の平均気温はセ氏マイナス43度だが、この実験は15〜20度の環境で行われた。ただし、温度の問題は火星に温室を設置することでクリアすることができそうだ。

クラウドファンディングも実施中

同大学のサイトでは、バーメリンク博士の研究をさらに進めるため、「Worms for Mars」と題したクラウドファンディングを実施中だ。2018年2月1日までに1万ユーロ(約134万円)を調達することを目標にしており、12月4日の時点で5751ユーロを集めている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中