最新記事

核兵器

米ロの新たな軍拡競争 オバマ政権の核兵器近代化が引き金に

2017年12月1日(金)18時27分


ロシアの放射能ドローン

ロシアも、殺傷力のより高い戦略兵器の製造に余念がない。プラウシェアーズ財団の試算では、米ロともに少なくとも20以上の新型あるいは改良された戦略兵器の製造に取り組んでいる。

ロシアは超大型ICBM「RS‐28サルマト(通称サタン2)」など、新型の地上発射ミサイルを製造している。サタン2は少なくとも核弾頭10発を搭載でき、異なる標的を狙うことが可能。米テキサス州やフランスと同規模の面積を破壊できると、ロシア国営メディアは伝えている。米国の専門家は、その可能性は低いとみているものの、同兵器の破壊力が壊滅的であることに変わりはない。

ロシア軍当局者は2015年、放射能をまき散らす「ダーティーボム(汚い爆弾)」のアイデアを新たな段階へと引き上げ、人類を滅亡させるような兵器を明らかにした。多くの米専門家はこれをはったりだとみているが、同兵器がすでに配備されているとみる向きもある。

この兵器は無人潜水ドローンで、最高速度56ノット、航続距離6200マイル(約1万キロメートル)とみられている。これまで一度も使用されたことのないダーティーボムのコンセプトは、テロリストがダイナマイトなど通常爆発装置を使って有害な放射性物質を拡散するといったものだ。ロシアのドローンの場合、致死的な大量の放射性物質が核爆弾によってまき散らされることになる。

この爆弾には、長期間にわたって有害なガンマ線を発する放射性コバルトが仕込まれている。爆発と風向きによって、放射性コバルトは何百キロも拡散し、米東海岸の大半を居住不能にしてしまいかねない。

ロシア国営テレビで放送されたドキュメンタリー番組によると、このドローンの目的は、「長期間にわたり、軍事や経済活動などに向かない広範囲な放射能汚染エリア」を生み出すことだとしている。

前出の米軍備管理協会のライフ氏は、たとえ構想段階だとしても、このような兵器はロシア政府の「実に奇抜な考え」を示していると指摘。「戦略的に無意味であり、核抑止力として何が必要かという点で、ひどくひねくれた考え方を表すものだ」と語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

Scot Paltrow

[ワシントン 21日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中