セクハラ・性暴力に「俺は無関係」と言えない理由
――ホワイトリボンキャンペーンでは、「フェアメンになろう」と呼び掛けている。身近な女性にフェア(対等)な態度で接し、女性への暴力を「振るわない」「許さない」「沈黙しない」とうたう。日本の男性に特有の、フェアメンになる難しさはあるか。
私が見るかぎり、世界でホワイトリボンの活動が特に成功しているのは主にイギリス連邦の国。発祥地のカナダ、そしてイギリス、オーストラリア、ニュージーランド。これらの国ではキャンペーンのサイトで「非暴力の誓い」を掲げて男性たちの賛同を募り、それにスポーツ選手や有名コメディアン、元首相など各界の著名人が署名している。すると「憧れの男性がやっているから」といって、一般の男の子たちが賛同する動きが出てくる。
日本では、「私は誓う」と人前で宣言するなんて恥ずかしくてできない、という人が多いのではないか。「あいつ、格好付けやがって」などと揶揄されるのが心配な人もいるだろう。外国と同じ手法ではなかなか広がらないだろうなという感覚はある。
欧米に比べて、圧倒的に男性優位な日本社会では、男女平等について考えなくてもやっていける男性が多数派。欧米では女性の地位がどんどん向上していて、男性優位が当たり前という言動や発言について考えさせられる場面が多いのではないか。
セクハラ問題には3つの段階があると思う。まずは女性たちが「不快で嫌。でもそれが何で、どうしたらいいのか分からない」という段階。次に、セクハラという言葉が定義され、「悪いのは自分ではない」ことに気付く段階。そして、「社会に訴えたら聞き入れてもらえる」段階。今がこの第3段階の入り口にあたり、彼女たちの訴えや思いを共有する上でネットが大きな役割を果たしている。
ただし、上下関係のある職場などでは、セクハラの被害に遭った女性たちだけでなく、セクハラを許せないと感じている男性たちも声を上げにくい。上司や同僚を告発すれば、自らの地位が脅かされるからだ。強い権限を持つトップが「セクハラを絶対に許さない」という姿勢をはっきりと示すことで、組織にもそうした意識が浸透していくと思う。
<ニューズウィーク日本版11月28日発売号(2017年12月5日号)は「セクハラは#MeTooで滅ぶのか」特集。「#MeToo」を合言葉にしたセクハラ告発が世界に拡大中だが、なぜ男性は女性に対する性的虐待を止められないのか。「告発」最新事情や各国への広がり、日本の現状、さらには男性心理も分析した>
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