最新記事

セクハラは#MeTooで滅ぶのか

セクハラ・性暴力に「俺は無関係」と言えない理由

2017年11月29日(水)16時18分
大橋 希(本誌記者)

――ホワイトリボンキャンペーンでは、「フェアメンになろう」と呼び掛けている。身近な女性にフェア(対等)な態度で接し、女性への暴力を「振るわない」「許さない」「沈黙しない」とうたう。日本の男性に特有の、フェアメンになる難しさはあるか。

私が見るかぎり、世界でホワイトリボンの活動が特に成功しているのは主にイギリス連邦の国。発祥地のカナダ、そしてイギリス、オーストラリア、ニュージーランド。これらの国ではキャンペーンのサイトで「非暴力の誓い」を掲げて男性たちの賛同を募り、それにスポーツ選手や有名コメディアン、元首相など各界の著名人が署名している。すると「憧れの男性がやっているから」といって、一般の男の子たちが賛同する動きが出てくる。

日本では、「私は誓う」と人前で宣言するなんて恥ずかしくてできない、という人が多いのではないか。「あいつ、格好付けやがって」などと揶揄されるのが心配な人もいるだろう。外国と同じ手法ではなかなか広がらないだろうなという感覚はある。
 
欧米に比べて、圧倒的に男性優位な日本社会では、男女平等について考えなくてもやっていける男性が多数派。欧米では女性の地位がどんどん向上していて、男性優位が当たり前という言動や発言について考えさせられる場面が多いのではないか。

セクハラ問題には3つの段階があると思う。まずは女性たちが「不快で嫌。でもそれが何で、どうしたらいいのか分からない」という段階。次に、セクハラという言葉が定義され、「悪いのは自分ではない」ことに気付く段階。そして、「社会に訴えたら聞き入れてもらえる」段階。今がこの第3段階の入り口にあたり、彼女たちの訴えや思いを共有する上でネットが大きな役割を果たしている。

ただし、上下関係のある職場などでは、セクハラの被害に遭った女性たちだけでなく、セクハラを許せないと感じている男性たちも声を上げにくい。上司や同僚を告発すれば、自らの地位が脅かされるからだ。強い権限を持つトップが「セクハラを絶対に許さない」という姿勢をはっきりと示すことで、組織にもそうした意識が浸透していくと思う。


171205cover_150.jpg<ニューズウィーク日本版11月28日発売号(2017年12月5日号)は「セクハラは#MeTooで滅ぶのか」特集。「#MeToo」を合言葉にしたセクハラ告発が世界に拡大中だが、なぜ男性は女性に対する性的虐待を止められないのか。「告発」最新事情や各国への広がり、日本の現状、さらには男性心理も分析した>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

カタール空爆でイスラエル非難相次ぐ、国連人権理事会

ビジネス

タイ中銀、金取引への課税検討 バーツ4年ぶり高値で

ワールド

「ガザは燃えている」、イスラエル軍が地上攻撃開始 

ビジネス

独ZEW景気期待指数、9月は予想外に上昇 「リスク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中