最新記事

宇宙実験室

中国の「天宮1号」が来年1〜3月に大気圏再突入 日本に落下の可能性も:最新予測

2017年11月14日(火)18時20分
高森郁哉

来年1〜3月に大気圏再突入が予想される「天宮1号」のイメージ image:CMSA

制御不能になり徐々に高度を下げている中国の軌道上実験モジュール「天宮1号」が、2018年1月〜3月に大気圏に再突入する。その大部分は燃え尽きるとみられるが、大きな部品が地表に到達する可能性もある。欧州宇宙機関(ESA)が今月示した最新の予測では、残骸が落下する可能性のある「危険地帯」に、日本の大部分も含まれている。

北緯43度と南緯43度の範囲に落下か

ESAは今月6日、天宮1号の再突入を監視する国際的なキャンペーンを主催すると発表した。その中で、現在高度約300キロメートルを周回している天宮1号が、2018年1月から3月のあいだに再突入すると予測。また、機体の破片が降下する可能性がある範囲として、赤道を中心とする北緯43度以南と南緯43度以北のゾーンを示した。

この範囲に位置するのは、ニューヨークとロサンゼルスを含む米国の南半分と南米大陸の大部分、アフリカ大陸や中東の全域と欧州の一部、北京を含む中国とアジアの広域、オーストラリアなど。日本列島では北海道札幌市が北緯43度にあたり、これより南の地域はすべて「危険地帯」に含まれる。

降下のタイミングを正確に予測することは難しく、再突入の2日前になってもおそらく6〜7時間の幅で把握できる程度といい、したがって降下物の落下地点も直前まで特定できないとみられる。

天宮1号のサイズと過去の落下事例

2011年9月に打ち上げられた天宮1号は、全長10.4メートル、直径3.35メートルで、質量は約8.5トン。中国政府は2016年9月、機械的または技術的な理由で天宮1号が制御不能になったことを発表した。

ハーバード大学の天体物理学者ジョナサン・マクドウェル氏は、降下する天宮1号の大部分は大気を通る際に熱で溶けてしまうが、ロケットエンジンなどの高密度の部品は燃え尽きずに残り、100キロほどの塊となって落下する可能性があると述べている

過去の宇宙ステーションの落下事例としては、米航空宇宙局(NASA)の「スカイラブ」(約77トン)が1979年7月に大気圏へ再突入し、オーストラリアの西オーストラリア州パースの郊外に破片が落下。また、ソ連の「サリュート7号」(約20トン)は1991年2月にアルゼンチン上空で再突入した際、中部サンタフェ州の町カピタン・ベルムデスで破片の落下が確認された。いずれも人的な被害は報告されなかった。

国際的な監視活動にJAXAも参加

ESAが発表したキャンペーンは、国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)が主体となって実施。IADCにはESAとNASAをはじめ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や中国国家航天局など13の国・地域の機関が参加しており、天宮1号の大気圏再突入をそれぞれ監視して得た情報を共有する。2月28日と3月1日には、欧州宇宙運用センターの本部があるドイツのダルムシュタット市で、スペースデブリの再突入に関するワークショップも開催する予定だ。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半へ上昇、上値追いは限定

ビジネス

中国、25年の鉱工業生産を5.9%増と予想=国営テ

ワールド

中国、次期5カ年計画で銅・アルミナの生産能力抑制へ

ワールド

ミャンマー、総選挙第3段階は来年1月25日 国営メ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中