最新記事

オゾンホール

オゾンホール、1988年以来最小に:温暖化がオゾン層保護に「貢献」

2017年11月9日(木)18時00分
高森郁哉

今年のオゾンホールは1988年後では最小となった(C)NASA

米航空宇宙局(NASA)は今月、南極上空のオゾン層が減少することで生じるオゾンホールが、1988年以降で最小になったと報告した。地球温暖化により成層圏の気温が例年より高かったことが、オゾン層の破壊を抑制した可能性があるとしている。

9〜10月に極大化する南極のオゾンホール

オゾンは3個の酸素原子からなる酸素の同素体で、高度約10〜50キロメートルの成層圏に多く存在してオゾン層を形成している。オゾン層は太陽から届く有害な波長の紫外線の多くを吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たす。

オゾン層におけるオゾン濃度の減少は、塩素や臭素を含むフロンなどの化合物が紫外線によって分解され、発生した塩素がオゾンを破壊することで起きるとされる。

冬の南極上空では、「極渦」と呼ばれるジェット気流帯が熱を遮断することで極成層圏雲が形成され、雲の氷の表面では塩素分子が作られる。晩冬から春にかけて太陽光が戻ってくると、塩素によるオゾンの破壊が急速に進んでオゾンホールが発生し、拡大していく。南極のオゾンホールは例年、9月から10月にかけて面積が最大になる。

NASAの観測によると、今年の南極のオゾンホールは9月11日に最大となり、米国本土の約2.5倍に相当する約1960万平方キロメートルになったという。このサイズは、1988年の約1380万平方キロメートルのあとでは最小となる。

地球温暖化による影響か

NASAの科学者らは、オゾンホールが昨年から今年にかけて縮小したのは、地球温暖化の影響が考えられるとしている。今年は南極の極渦の温度が高かったことで、極成層圏雲のサイズも小さくなり、その結果塩素分子の生成とオゾンの破壊も抑制された可能性があるという。

NASAはオゾンホールの観測データを「NASAオゾン・ウォッチ」というサイトで公開している(着色された南半球の画像では、青い部分がオゾン量が少ないことを示す)。今年のデータを見ると、オゾンホールの面積は9月11日をピークに減少に転じ、最新の11月6日には829万平方キロメートルと、ピーク時の半分以下にまで縮小していることがわかる。

科学者らは、南極のオゾンホールが2070年頃に1980年の水準にまで回復すると予想している。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中