最新記事

法からのぞく日本社会

国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・中編)

2017年10月20日(金)17時29分
長嶺超輝(ライター)

4:「裁判経験豊富」菅野博之

東北大法卒・裁判官出身・北海道出身
就任:2016年9月5日/定年:2022年7月2日

《プロフィール》
民事・行政事件に精通する裁判官であり、かつては日本航空(JAL)の会社更生手続きにも関与してきた。

難民問題を裁く判決を読み上げるときは、外国人に分かりやすい平易な日本語に言い換えて説明する配慮を、かなり早い段階から進めていた。

幼少の頃は「火星探検隊」に憧れ、高校生で天体望遠鏡を自作したこともあるという。SF小説のファン。

1992年には、少額の民事事件を早期に解決させる「即決裁判制度」を日本に導入できないか研究するため、6カ月間イギリスに派遣されて、ロンドン大学附属高等法学研究所などで研究した。後に即決裁判が日本でも導入されたきっかけをつくる役割を果たした。

《主な発言》
・2016年9月5日、最高裁判事就任会見にて。
「公民の間でも議論が成熟していない難しい課題が、裁判所に持ちこまれる時代になっている。期待、ニーズに負けないように、裁判所も質をアップしていかなければならない」

・2012年3月28日、水戸地裁所長着任会見にて。
「(水戸の印象について)震災の爪痕は残っているが、街中はにぎやかで、豊かな田畑が広がる中に大型店舗がある風景が外国っぽい」

・『判例時報』1995年2月11日号。
「私は、民事裁判は最も本質的には、公費によるサービス業であると考えている。したがって、司法サービスに対する国民のニーズの変化と、コストパフォーマンスを考えなければならない」

「(もし裁判手続きを中断し、当事者間で和解交渉を進めてもらう方法を採ると)裁判官の習性として、その事件を忘れてしまうことになりがちである。しかし、実際には、このような進行の事件が長期未済事件(ずっと片付かない裁判)の大きな部分を占めている。今後は、任せておいてよい事件であるか否かを見極め、安易な運用はしないようにと自戒している」

《主な関与判決》
・大阪市役所の庁舎内にあった職員労働組合の事務所について、市長が代わったことをきっかけに使用不許可となり、労組が立ち退きを迫られた件で、立ち退きを追認する決定(※一審は「立ち退きは職員の労働基本権を侵害する」として、市に66万円の賠償命令)。

・米軍普天間飛行場(沖縄県)の辺野古移設をめぐり、国が出した海岸地域の埋め立ての承認を県知事が取り消したのを不服として、国が県を訴えた裁判で、「承認取り消しは違法」とした国側勝訴の原審判決を支持(※裁判長ではなかったが、全員一致の合議に関与)。

・フリージャーナリストらが、「特定秘密保護法で取材が萎縮させられ、業務が困難になった」として、特定秘密保護法は憲法違反で無効だと争うも、棄却の判断。「訴えは、将来的に罰則を適用されるかもしれないという抽象的なもの」とした。

国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・後編/大谷直人氏、木澤克之氏、林 景一氏)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏、イラン核問題巡りトランプ氏と協議へ 

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ワールド

ロ、米のカリブ海での行動に懸念表明 ベネズエラ外相

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速か、米のタンカー拿捕受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中