最新記事

核攻撃

北朝鮮の核攻撃に備えるカリフォルニア州

2017年9月26日(火)17時30分
ジャナ・ウィンター

北朝鮮が9月3日に行った過去最大規模の核実験。ミサイルも米本土に到達可能とみられている Kim Hong-Ji-REUTERS

<核攻撃後しばらくは連邦政府も助けに来られない、という南カリフォルニアの覚悟>

ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩党委員長の罵り合いが「宣戦布告」した、しないの舌戦にまでエスカレートするなか、米本土への核攻撃の脅威をとりわけ深刻に受け止めている自治体がある──カリフォルニア州だ。

カリフォルニア州ロサンゼルス地区を管轄する情報機関、合同地域情報センター(JRIC)は8月、北朝鮮から核攻撃を受ける脅威が増したとする報告書を発表。ロサンゼルスが位置する南カリフォルニアが核攻撃を受ければ「大惨事」になるとし、周辺の自治体に核攻撃に備えた対策を強化するよう促している。

報告書は、北朝鮮が7月下旬に発射実験を行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)について、理論上は米西海岸に到達可能だとする分析を紹介。

「核攻撃に備えた留意事項」と題した16ページに及ぶ報告書は8月16日付けで、「公用に限る」のマークが入っている。従って先月これを閲覧したのは、ロサンゼルス地区の自治体、州政府機関、連邦政府機関の関係者に加え、米国土安全保障省など全米を統括する連邦政府機関だけだった。

報告書の目的は核攻撃に備えた計画や手引きを、関係自治体や政府機関の間でできるだけ広範に共有することだったと、この報告書を受け取った2人の関係者は言う。核攻撃があった時には多数の政府機関が対応に当たるが、そうした機関にはそもそも核攻撃に関する情報にアクセスできない職員が多かったと言う。

報告書に書かれたほとんどの情報は、核爆発の被害についてよく知られた話に基づいている。放射能の人体や環境への影響や、上空で核爆発を起こし都市機能や通信網を破壊する電磁パルス攻撃の可能性、核爆発が人体やインフラに与える被害などにも言及している。

「放射能から身を守るための基本事項」という項目では、核攻撃の間に取るべき行動の手引きを解説する。「うつ伏せで倒れ、皮膚への被曝を避けるために手を体の下側に隠す」「爆発による熱と衝撃波が収まるまで、そのまま倒れた状態で待機する」

住民のパニックも想定

また、政府当局は核爆発の直後に市民のパニックに直面する可能性が高いと警告。市民は直ちに避難する必要があるものの、「放射能に関する十分な理解がなければ不安が高まり、当局の指示に従わなくなる恐れがある」と指摘する。

消防隊や警官など緊急救助に当たる関係者向けには、公衆衛生や物流の確保に関する様々な問題を詳しく説明している。

「南カリフォルニアが核攻撃を受ければ大惨事になる」と報告書は指摘する。「政府機関や緊急救援隊は、核攻撃後も組織として機能を維持することで、人命を守り、秩序を維持し、復旧活動を手助けする役割が期待される」

核攻撃直後の現場に立ち入るのは難しいことから、連邦政府の援助は限られたものになるとも指摘する。「核攻撃後24~72時間の現場では、連邦政府から大した援助を受けられないだろう」

ある程度、自立した緊急対策が必要になる。

(翻訳:河原里香)

From Foreign Policy Magazine

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ

ワールド

全米で反トランプ氏デモ、「王はいらない」 数百万人

ビジネス

アングル:中国の飲食店がシンガポールに殺到、海外展

ワールド

焦点:なぜ欧州は年金制度の「ブラックホール」と向き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みんなそうじゃないの?」 投稿した写真が話題に
  • 4
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 5
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 6
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中