最新記事

韓国

あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

2017年8月19日(土)14時00分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

この夏最大のヒットが確実視されていた「軍艦島」 (c) CJ E&M

<この夏、日本のメディアがこぞって取り上げた韓国映画がある。「日韓の戦前の歴史問題を描いた映画が大ヒット」と騒がれたその映画は、本当に"反日"映画として韓国で大ヒットしたのか?>

7月26日、韓国で注目の映画が公開された。日本の長崎県にある端島、通称"軍艦島"を舞台にした映画である。ソン・ジュンギ、ソ・ジソブ、ファン・ジョンミン等、日本でも人気のある俳優が出演しており、豪華なキャストだけでも注目を集めた。

明治初期から海底炭坑の島として栄えた端島は、日本初の鉄筋コンクリートによる集合住宅が建てられ、その戦艦のような外観から"軍艦島"と呼ばれるようになった。国のエネルギー政策の変更により昭和49年に閉山されて島は無人となり、最近では廃墟マニアをターゲットとしたツアーが行われていたり、写真集なども出版されている。

しかし、韓国人にとってはただの島というわけではない。韓国人にその名が広まったのは2015年に軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」を、ユネスコの諮問機関が遺産登録を勧告し、その可否が審議された時である。韓国は"軍艦島"が「朝鮮半島出身者を強制労働させた施設」と強く反対し、CMを作ってバスなどの公共交通で流すなどキャンペーンを行った。

【参考記事】朴大統領の人事介入から口裂け女まで 検閲だらけの韓国映画界
【参考記事】劇場ファーストこそ映画? カンヌ映画祭、今年は映画界とNetflixが激突!


そして、今回の映画はその名もスバリ「軍艦島」である。観客はあらすじを読まなくともストーリーが頭に浮かぶであろう。

映画は、太平洋戦争末期の軍艦島に炭坑夫として強制徴用された朝鮮人400人が決死の脱出を図るという内容で、監督は2015年に日本でも公開された映画「ベテラン」のリュ・スンワン。「ベテラン」は、韓国内で約1340万人を動員しており、これは現時点での韓国国内の歴代観客動員数第3位。言わばドル箱監督の起用である。

韓国人の愛国心を刺激する内容、人気監督、豪華な俳優陣、夏休みど真ん中の公開......。ここまで揃ったなら誰しもがこの映画の大ヒットを予想したであろう。実際、映画公開前には予告編がネット上で公開されると13時間で100万回再生を突破。リュ・スンワン監督の1000万人超え第2作となるだろうと思われていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中