最新記事

環境

太陽エネルギーが石炭産業を殺す日

2017年7月15日(土)17時10分
ケビン・メイニー

「テクノロジーの低価格化と足並みをそろえ、今や太陽光発電コストも下がり続けている」と、米科学者のラメズ・ナームは言う。「他の電力技術やビジネスにとっては破壊的だ」

もちろん、太陽光はクリーンでもある。炭素資源を燃やすことが気候変動につながると分かっている人なら、太陽光を応援したくなるだろう。でもたとえ気候変動を疑う人でも問題なし。彼らも低価格なエネルギーのほうがいいに決まっているからだ。

加えて太陽光は、太陽が死に絶える50億年後まで枯渇する心配がない。太陽光は約5日分で、石油、石炭、天然ガスの総埋蔵量のエネルギーに匹敵する。私たちは膨大なエネルギーのほんの一部を利用するだけでいい。

他方、太陽光発電には信頼性の問題が付きまとう。夜間や悪天のときにはどうなるのか? そこで、バッテリー技術の出番だ。大容量バッテリーもまた、絶えず低価格化を続けている。

結局、政策や条約ではなく技術と経済上の理由から、石炭は遠からず淘汰されるだろう。太陽は輝き続け、太陽光パネルはそれを電力に変換し続け、夜間や曇りの日にも余剰電力はバッテリーに貯蔵され続ける。化石燃料で儲けた大富豪たちが、航空機時代の到来に直面した鉄道王たちのごとき終焉を迎えるのは確実だ。

【参考記事】「地球の気温は250度まで上昇し硫酸の雨が降る」ホーキング博士

政府主導で雇用創出を

となると、トランプのパリ協定離脱はどう影響するのか。おそらく自然エネルギー界のシリコンバレーは中国のどこかに誕生するだろう。今年1月、中国国家エネルギー局は20年までに再生可能エネルギーに3600億ドルを投じると発表した。

カネと雇用が自然エネルギー技術に流れていくとするなら、アメリカは既に後れを取っている。なのに米政府は、気にするなと言うばかりだ。

そう、長い間石炭に依存してきた地域や人々は、とてつもなく困難な時を迎えている。北朝鮮の指導者かパプアニューギニアの秘境で伝統文化を守る部族でもない限り、技術革新の波から逃れることはできない。特に、自分を除く世界中が突き進んでいる場合には。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開巡り18日にも採決 可

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を

ワールド

米大学の25年秋新規留学生数、17%減 ビザ不安広

ビジネス

ティール氏のヘッジファンド、保有エヌビディア株を全
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中