最新記事

ヨーロッパ

新しい対ロ政策はマクロン仏大統領が拓く

2017年7月6日(木)18時40分
ファブリス・ポシェル(米大西洋評議会ブレント・スコウクロフト国際安全保障研究センターの上級研究員)

これらの地域は、不法移民とテロ組織が混じり合った危険な温床となっており、フランスにとって最大の脅威だ。旧植民地で、フランス軍のプレゼンスが大きいこともあって、フランスはこれらの地域に多大な権益を持つ。だがこの地域で何かを達成するのは難しい。とくに国連では、ロシアの承認なしでは、ほとんど何もできない。

だからこそマクロンは、シリアやリビアのような紛争地でわずかでも安定を取り戻すには、西側諸国がロシアと上手く付き合うしかない、と結論を出した。ヨーロッパの新聞社8社とのインタビューで、この点を非常に明確に示している。

対ロ政策では、ニコラ・サルコジ元大統領が反面教師になるだろう。サルコジは、ロシアとの戦略的協力関係を歓迎し、フランス製の高性能輸送ヘリコプター2機をロシアに売却するところまでいった(後に契約はキャンセルされ、エジプトに売却された)。

それに対してマクロンは、仏大統領選中にロシアの介入を肌身に感じたことで、プーチンのロシアにはほとんど幻想を抱いていないようだ。トランプと違い、マクロンは理解しているようだ。ウクライナを犠牲にしない限り、ロシアとの関係改善は望めないということを。ロシアとの協力は、選択肢の1つではなく必要不可欠だということも。

伝統のド・ゴール主義

そうした考えを支えるのは、フランス外交に根付く「ド・ゴール主義」だ。外国と同盟関係を結びながらも国家としての独自性を維持し、アメリカとも旧ソ連とも等距離を保つことを目指すものだ。

マクロンはポロシェンコとの共同記者会見で、もしロシアが態度を改めなくても、ミンスク合意をわずかでも具体的に前進させる、という手法を提案したが、それは希望的観測に等しい。

だがマクロンは、ウクライナでプーチンを動かすには「マクロン旋風」で十分だと思っているようだ。もし実現すれば、現代で最も得難い政治的勝利になるのは間違いない。

(翻訳:河原里香)

This article first appeared on the Atlantic Council site.
Fabrice Pothier is a nonresident senior fellow in the Atlantic Council's Brent Scowcroft Center on International Security.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感3月確報、53.3に低下 

ワールド

スペースX上場巡り話題沸騰、銘柄コードが賭け対象に

ビジネス

ECBの拙速利上げに慎重、インフレ定着の見極めを=

ワールド

米国務長官、地上部隊使わず対イラン目標達成へ 「数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 6
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 7
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 8
    ニュースでよく聞く「東京外国為替市場」は、実際は…
  • 9
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 10
    アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中