最新記事

欧州議会が劉暁波釈放要求を決議----G20に合わせて

2017年7月10日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

日本で共謀罪が少なからぬ反対を受けている状況と似ている。

日本の国会では、この答弁が明確には成されなかった。これは中国における国家安全危害罪同様、恣意性があるか否かという点において、注意が払われるべきである。

ワシントンの人権派弁護士からのメールによれば、欧州議会において、劉暁波釈放に関する議題は7月6日の午前中に提出され、お昼の12時20分に可決されたというから、実に見事なものである。

中国は突如、ドイツとアメリカの専門医を受け入れた

これらの動きを受けて、中国政府は突如、ドイツとアメリカの専門医が、劉暁波の治療に当たるために遼寧省の病院に行くことを認めた。最初は「中国における診療資格がない」などと言っていたが、7日に受け入れを認め、ドイツとアメリカの専門医が瀋陽入りした。 

実は中国国内外の民主活動家たちは、もしも欧州議会で決議されなかった場合は、特定の国が動議としてG20首脳会議で「劉暁波を自由の身に」という要求を習近平に対してしてくれることになっていたとのこと。人権を重んじる民主主義的価値観に基づき、常に人権の侵犯を侵す中国を非難するという約束が成されていたとなだという。そのため習近平は、慌てて専門医受け入れを決めたのだという。

G20で習近平、影薄く

7月7日からドイツのハンブルグで開幕したG20首脳会議において、習近平の存在感は薄かった。プーチン大統領とはモスクワで事前に会っているし、トランプ大統領との会談は、G20閉幕後の、最後の最後に回されている。ひょっとしたら米中首脳会談は無くなったのかもしれないと中国政府関係者さえ気を揉んだようだ。G20閉幕のニュースが流れても、中国の中央テレビ局CCTVでは、米中首脳会談のニュースが流れなかった。ようやくその情報が届いたのは、8日の深夜のことである。

あの(人権問題で米国内で非難を受けている)トランプ大統領でさえ、習近平との会談を日程の最後の最後に回すことによって、「人権問題に対する中国への抵抗」を暗に表明している。

日本と韓国の首脳との会談は、それでも少し早目に行なっているが、それは日本と韓国が習近平との会談を熱望したからであり、アメリカのような無言の意思表示はしていない。むしろ中国の方が、会談の場に中国の国旗とともに日本の国旗を置くなどして、人権問題に関して非難されないために配慮したほどである。

民主主義的価値観、未だ死なず

いま世界は「自由と民主と人権」という「民主主義的価値観」が勝つのか、それとも、それらを無視して経済発展だけで民主の心を買っていく「一党独裁的価値観」が勝つのか、そのせめぎあいの中にある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中