最新記事

イギリス社会

ロンドン高層住宅火災で明らかに イギリスが抱える「貧富の格差」

2017年6月17日(土)11時00分


「二都物語」

改修工事中に同タワーの住民と緊密に連携していた地域のまとめ役、ピルグリム・タッカーさんは、今回の火災は、長年の間コミュニティの一部を丸ごと無視したことによる悲劇的な結末だと考えている。

「この公営住宅の住人は、自分たちが無視されていることを知っている」と、彼女は衝撃を隠せない様子で語った。「もし行政がするべき仕事をしていたなら、こんなことは起きなかった」

防災上の懸念を住人が指摘したにもかかわらず聞き入れられなかったとタッカー氏らが声を上げるなか、大惨事の余波は、より大きな政治の世界にも広がりつつある。

先週の総選挙で、財政規律の重視や、減税、ビジネス環境の整備を掲げた与党保守党は、公共事業に対する支出拡大を重視する野党労働党に対し議席を失い、過半数を確保できなかった。

グレンフェル・タワーのあるケンジントンの選挙区では、史上初めて労働党の候補者が当選を果たし、驚きを持って受け止められた。

当選した労働党のエマ・デントコード議員は新聞のインタビューで、安全性を軽視したとして行政当局を批判し、悲劇は防げたはずだと指摘するなど、火災を機に素早い反応を見せた。

メイ首相は15日、グレンフェル・タワーを訪問したが、消防士と会話する一方で住民とは言葉を交わさなかったと批判を浴びた。

対照的に、近隣の教会を訪問して住民やボランティアに面会した労働党のコービン党首は、「来てくれてありがとう」と周囲から声がかかるなど歓迎された。

「ケンジントンが『二都物語』であることは、避けられない事実だ」と、コービン党首は記者団に述べた。「ケンジントンの南側は極めて裕福で、全国で最も高級な地区だ。この火事が起きた地区は、国内でも最貧の部類だと思う」

「ある種の人々」

グレンフェルがある一角のすぐ外側は、多様な層が住むノッティング・デールと呼ばれる区域だ。味気のない1970年代築の公共住宅の周りには、富豪とまではいかないものの、裕福な人々が住む手入れの行き届いた住宅が並ぶきれいな通りがある。富豪たちは、数分は離れたホランド・パークと呼ばれる地区に住んでいる。

ノッティング・デールでは、地元住民の怒りにもかかわらず、火災によってコミュニティの異なる層の人々が団結した。タワーから脱出した人々や、現場近くの自宅から避難を余儀なくされた人々のために、より裕福な住民の多くが住居を開放したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英CPI、食品価格データ収集で2月から新手法 若干

ビジネス

米アマゾン、全世界で1.6万人削減 過剰雇用是正と

ビジネス

ドルの基軸通貨としての役割、市場が疑問視も 独当局

ワールド

ロシア軍がキーウ攻撃、2人死亡 オデーサも連夜被害
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 9
    「発生確率100%のパンデミック」専門家が「がん」を…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 9
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中