最新記事

<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

米国防長官にアドバイザーを送り込む、謎のシリコンバレー企業

2017年6月13日(火)15時15分
山田敏弘(ジャーナリスト)

パランティアの共同創設者ティールは大統領選でトランプを支持していた(写真は昨年7月の共和党大会でスピーチするティール) Rick Wilking-REUTERS

<トランプ政権のマティス国防長官周辺に、あるシリコンバレー企業が3人のアドバイザーを送り込んでいる。各国の情報機関や捜査機関をクライアントに持つ、謎の企業の正体とは?>

政治ニュース専門メディアのポリティコは今週、ジェームズ・マティス米国防長官にからむ興味深い記事を掲載している。

この記事は独自調査によって、ある企業と深い繋がりがある少なくとも3人が、マティス国防長官の側近として米国防総省の中枢に食い込んでいることが判明したと報じている。同じ企業関係者が、次席補佐官などに3人も起用されるのは、過去をさかのぼっても非常にめずらしいケースだという。

なぜ一企業にそんなことが可能なのかと不思議に思われるが、それは国防総省や米政府に対してかなりの影響力を持っているからだ。

その企業とは、シリコンバレーに拠点を置くパランティア(Palantir)。日本ではまだその名前を知る人は少ないかもしれない。

【参考記事】サイバー攻撃で他国を先制攻撃したいドイツの本音

実はこの企業は何年も前から、アメリカの安全保障の関係者の間ではよく知られていた。パランティアは世界的にも「最も謎めいた企業」の一つと言われているが、一体どんなビジネスをしているのか。

端的に言うと、パランティアは情報分析ツールを提供するIT企業だ。同社のソフトウェアは、データマイニングを行うツールで、諜報活動で得た情報をはじめ、SNSや電子メール、クレジットカード履歴や航空チケットの購入記録、監視カメラの映像などの情報を収集・分析し、短時間でビジュアルマップやヒストグラム、チャートを作り上げる。

情報・捜査機関は、テロやスパイ、犯罪対策として莫大な証拠やデータを集めて、日々分析を行う。ただどれほど情報収集の能力が優れていても、収集したデータや情報は単なる断片にすぎない。デジタル化が進む現代、世の中にある情報量は膨大なため、情報をまとめて分析し、点と線を結ぶのは大変な作業となる。一方、効率的に分析できれば、テロや犯罪の捜査や、ターゲットの監視などの能力が飛躍的に高まる。そこにパランティアのソフトウェアが導入されているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、外資参入規制を緩和 25年版ネガティブリスト

ビジネス

米関税措置が為替含め市場に波及、実体経済に悪影響=

ビジネス

韓国LG電子、インド子会社のIPO延期=関係筋

ビジネス

米TI、第2四半期売上高見通しが予想超え アナログ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中