最新記事

インタビュー

長時間労働の是正がブレークスルーをもたらす

2017年6月9日(金)18時58分
WORKSIGHT

「不調」「好調」を「普通」の状態へリカバリーするには

石川: 人生100年時代、長く活躍しないといけないという点で、私がオリンピック選手から学んだことがあります。それはリカバリーには2種類あるということ。人のコンディションは「不調」「普通」「好調」の3つですが、不調も好調も長続きしません。ですから不調を普通に戻すリカバリーと、好調から普通に戻すリカバリー、この2つを覚えておかないと長くは活躍できないんですね。

そのための具体的な方法論として、不調を普通に戻すのに一番大事なのは睡眠です。一流選手、あるいは一流パフォーマーほどよく寝ています。多くの日本人は、起きている自分の方が寝ている自分より偉いと思っているんですよ。でも寝ている自分の方が、実は大量に情報を処理してくれていますからね。寝るときは「後はお任せしました」というくらいでいい(笑)。それから好調を普通に戻すには仕事から離れることです。日本人は全然休みを取らないので、ずっと好調の状態が続きすぎて、好調疲れの人が多いかなと思います。

グラットン: 今のお話は共感できます。私の研究でも同じような結論が導き出されているからです。2015年の世界経済フォーラムで私はF1ドライバーに関するセッションを行いました。医師を交えて3人のドライバーとパフォーマンス向上の要素について検討したのですが、F1ドライバーもやはり睡眠を重視していたんです。彼らはコンディションを整えるために8~10時間寝るそうです。人間が最高のパフォーマンスを発揮するには、十分な睡眠が不可欠なんですね。

また、これも石川さんがおっしゃったとおり、仕事から離れることもパフォーマンス向上に寄与します。これは優秀なアスリート集団の証言です。もっと睡眠をとって、仕事から離れることが重要だということです。

石川: そうすることでアイデアが湧き、人間としてクリエイティビティが発揮できるということでしょうか。

グラットン: その通り! 石川さん、ぜひそれについて本を書いてくださいね(笑)。

WEB限定コンテンツ
(2016.10.25 中央区のベルサール汐留にて取材)

text: Yoshie Kaneko
photo: Kei Katagiri

wsLyndaGratton170609-2.jpg* トークセッションの前に「人生100年時代におけるセルフマネジメントの原則」と題して石川氏の講演が行われた。日本人の行動が意志偏重となったことの背景に、不屈の意志の重要性を説いたサミュエル・スマイルズの書籍『西國立志編』があると指摘、しかし、長く働き続けるには意志や根性だけでなく、長期間に渡る変化が必要であり、体調に応じた小さなノルマを設定すること、限界に来たら他分野からの学びを取り入れることなど、行動科学に基づいたセルフマネジメント手法を紹介した。

wsLyndaGratton170608-site1.jpgロンドン・ビジネススクールは英国・ロンドンにあるビジネススクール。世界で最高位のビジネススクールであり、MBAプログラムや金融実務経験者を対象としたマスターズ・イン・ファイナンス(MiF)プログラムは世界トップレベルと評価されている。
http://www.london.edu/

wsLyndaGratton170609-site3.jpg石川氏が共同創業者/副社長を務める株式会社 Campus for H は、企業、組織の健康づくり・生産性向上に関する調査・研究や、関連するサービスの開発・販売とコンサルテーションを行っている。
http://campus-h.com/

また石川氏は、ソーシャルマーケティング、調査・研究、データ解析などを通じて社会や医療の問題の解決を図る株式会社キャンサースキャンの創業にも携わっている。
https://cancerscan.jp/

wsLyndaGratton170608-portrait.jpgリンダ・グラットン(Lynda Gratton)
ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。2年に1度発表される世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランキング入りを果たしている。フィナンシャルタイムズ紙「次の10年で最も大きな変化を生み出しうるビジネス思想家」、英タイムズ紙「世界のトップ15ビジネス思想家」などに選出。邦訳されベストセラーとなった『ワーク・シフト』(2013年ビジネス書大賞受賞)などの著作があり、20を超える言語に翻訳されている。‎‎

wsLyndaGratton170609-portrait.jpg石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者、株式会社 Campus for H 共同創業者。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、マーケティング、データ解析等。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。著書に『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)、『最後のダイエット』、『友だちの数で寿命はきまる』(ともにマガジンハウス社)、『健康学習のすすめ』(日本ヘルスサイエンスセンター)がある。

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
wslogo200.jpg


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米AI株急落でインフラ企業に照準、巨額投資の「受益

ワールド

平和評議会初会合、トランプ氏は各国首脳に「お世辞外

ビジネス

米NY州知事、ロボタクシー導入拡大案を撤回 ウェイ

ビジネス

米メタ、AI資金調達で株式報酬5%削減=FT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 5
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 6
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 9
    カンボジア詐欺工場に「人身売買」されたアフリカ人…
  • 10
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中