「空飛ぶ自動車」いよいよ発売、課題は大衆化
リリウムとエアロモービルが決定的に違うのは、離着陸の方法だ。エアロモービルは折りたたみ式の翼を採用しており、離陸には一般的な滑走路が必要なため、どこに行くにも空港を使用することになる。利用は行きも帰りも空港がある場所に限られてしまうのだ。
一方のリリウムは、垂直離着陸(VTOL)システムを採用し、ヘリコプターのようにどこでも離着陸が可能だ。
「VTOLの方が実用性はある。基本的にどこでも着陸できるから」とリリウムの広報担当者は本誌に語った。「我々の目的は、滑走路がない都市部の人々に向けたサービスを提供することだ」
1927年にヘンリー・フォードが設計した「空飛ぶT型フォード」 Creative Commons
エアロモービルが滑走路を使うようにしたのは、都市部でVTOLを普及させる場合に直面する、航空規制というハードルに配慮した判断だという。ドローン規制でさえ、当局はさんざん頭を悩ませているのだから。
空飛ぶ車を手がけるのはスタートアップ企業だけではない。欧州航空機大手エアバスも個人向けの空飛ぶ車を開発中だし、今週はグーグルのラリー・ペイジが出資する米スタートアップ企業キティホークも試作車「フライヤー」を発表した。
最終的にこれらの車は、ウーバーが提案するような空飛ぶタクシーのネットワークに組み込まれる可能性がある。ウーバーのジェフ・ホールデン最高製品責任者(CPO)は、VTOLを利用した短距離輸送ネットワーク「ウーバー・エレベート」を活用して、2023年までに乗客を自動運転ドローンのタクシーで移動させる未来を思い描く。
ウーバーは昨年、この構想をまとめた99ページの白書を発表し、今週米テキサス州ダラスで開催した「ウーバー・エレベート・サミット」でその内容をさらに膨らませた。エアロモービルも空飛ぶ車でウーバーと提携を目指すスタートアップの1つだ。
空飛ぶタクシーのネットワーク作りを目指すウーバー Uber
「ウーバーの計画を注意深く見守っている」とエアモービルのバドツは言った。「我々はウーバーのチームと連絡を取り合い、エレベートのネットワークで自社の車を走らせるよう交渉中だ。だがこの仕組みが実現するのは12~15年後になるかもしれない」
今年はライト兄弟の最大のライバルだったグレン・カーチスが、世界初の空飛ぶ車を発明してちょうど100年という記念の年だ。カーチスは飛行に成功しなかったが、あれから1世紀で空の旅は商業化され、人類初の月面着陸も成功、インターネットも発明された。空飛ぶ自動車がどんなにSFチックでも、希望を持つ根拠は十分だ。
(翻訳:河原里香)
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