最新記事

北朝鮮

中朝同盟は「血の絆」ではない。日本の根本的勘違い

2017年4月25日(火)18時43分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

しかし、1948年9月9日に、ソ連の占領下における朝鮮半島の北側に「朝鮮民主主義人民共和国」(=北朝鮮)が建国されると、金日成はソ連の後押しで首相に就任する。

朝鮮人民軍は1948年2月8日に建軍したので、建軍記念日は「2月8日」なのだが、1978年以降は、金日成が「満州」で抗日遊撃隊を組織したとされる1932年4月25日にちなんで「4月25日」に変更された。

だから、本日、「4月25日」が朝鮮人民軍建軍記念日となっている。

建軍された当時、この朝鮮人民軍を主として構成していたのは、毛沢東の指導下にあった中国人民解放軍の「延安派」およびソ連から帰国した「ソ連派」、あるいはもともと朝鮮半島にいた共産党員によって構成された軍隊であった。

朝鮮戦争では勇猛に戦ったので、金日成は彼らを生かしておいたが、休戦協定締結後の1956年になると、金日成は強力な力を持っている「延安派」の粛清に踏み切った。

そして朝鮮戦争の功績は自分(金日成)にあるのであって、中国人民志願軍の貢献によるものではないとさえ言い始めたのだ。自分自身の権力基盤があまりに弱かったために、身の危険を感じたからだろう。

中朝同盟は朝鮮戦争の結果、生まれたものではない

朝鮮戦争の休戦協定が結ばれたのは1953年7月27日。中朝同盟、正確には「中朝友好協力相互援助条約」が締結されたのは1961年。調印されたのは同年7月11日で、中朝両国はそれぞれ8月30日および23日に批准している。

条約の発端は1961年5月16日に韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領(パク・クネ前大統領の父親)が軍事クーデターを起こして韓国に反共軍事政権を樹立したためとすることが多いが、そのような解釈だけでは現在の中朝関係を理解することはできない。

朝鮮戦争中にアメリカは中国に原爆を落そうとしたし、また1958年には韓国に核兵器を配備して、休戦協定を破った。休戦協定第13条の(d)では、朝鮮半島に新しく兵器を持ち込んではならないとしていた。

1964年に中国が原爆実験に成功したことからも分かるように、このまま放置しておけば中国が核兵器の脅威にさらされ続けると思ったからだ。原子爆弾の研究開発は1956年から開始され、58年以降に加速していった。中国が原爆実験に成功すると、北朝鮮は中国にその技術の支援を申し出たが、毛沢東は一言のもとに拒絶している。

米韓が共同して朝鮮半島を統一するかもしれないという懸念は、中国にとって「北朝鮮と友好関係を保って北朝鮮を守ろう」といった、「北朝鮮のためのもの」ではなく、あくまでも対米対策であった。

中国は朝鮮戦争勃発時点から、北朝鮮とは「本当は」仲が悪く、「血の絆」などでは、一切、結ばれていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=

ビジネス

アングル:中国「二線都市」が高級ブランドの最前線に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 4
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 5
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中