最新記事

アメリカ政治

透明性に大きな懸念、情報を隠すトランプのホワイトハウス

2017年4月24日(月)20時55分
ニナ・バーレイ

政権側が放置している質問の多くは、トランプや側近らの透明性を疑問視する内容のもの。民主党の上院議員8人は3月6日付けで、ホワイトハウスとマール・ア・ラーゴの訪問者の記録を公表するよう求めたがかなわなかった。トランプ本人をはじめとする政権関係者の利益相反疑惑についての質問もあった。

公共の安全やサービスなど日常的な問題を取り上げた書簡も同じ憂き目を見ている。例えば3月22日に民主党のエイミー・クロブシャー上院議員(ミネソタ州)が連邦通信委員会(FCC)のアジト・パイ委員長に宛てた質問書は、緊急通報用の電話番号「911」が携帯電話で不通になった問題についての情報と、今後同様の事態が起きるのを防ぐための改善策を求める内容だった。カリフォルニア州選出の下院議員らが3月、暴風雨で壊滅的な被害を受けた同州の一部地域を対象に非常事態宣言を発令するようトランプに要求した。だがいずれも政権側から回答はなかった。

政府機関に電話をしても応答がなく、担当者として責任をもつ職員もいないというまるで発展途上国のような光景で、現代のアメリカでは前例がない。だが前兆はあった。トランプの側近で極右のスティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問はかねてから、レーガン流に政府の機能を縮小するだけでなく、「行政国家の解体」を政権の優先課題に掲げていた。

バノンは2月下旬に首都ワシントン近郊で行われた「保守政治活動会議」の全米大会に登壇すると、トランプはその目標を推進できる閣僚を厳選して組閣したのだと誇らしげに語った。「閣僚候補の顔触れを見れば、理由あって選出されたことが一目瞭然だ。そしてその理由とは、解体だ」

能力不足ではなく故意

バノンのようなイデオロギーがない場合でも、トランプやニューヨークの著名投資家カール・アイカーンのような富裕なトランプ支持者らは、政府の活動を自分たちのビジネスに対する素人的な介入とみなし、憎悪してきたという共通点がある。

これまでも政権交代があれば、政府機関の混乱や対応の遅れが生じるのはいつものことだ。オバマ前政権も、発足して最初の数カ月は、議会からの手紙への回答が遅れることも時々あった。だがトランプ政権の対応の遅れは度を越しており、原因は職務能力や経験の不足というより、むしろ故意ではないかと疑われる。

「どんな政権でも、あからさまに政治的動機の文書が送られてきたと感じれば、最初は自己防衛的になるだろう」と、サーベンスは言う。「だが我々が調べた未回答の質問には、ごく一般的な有権者の問い合わせも含まれていた。それこそが政権側に協力姿勢がないと感じる理由だ。透明性欠如の背景には、何らかの組織的な意図があると思えてならない。政権や政府機関を乗っ取ってやろうという集団的な意思が幅を利かせつつある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米2月求人件数、19万件減少 関税懸念で労働需要抑

ワールド

相互関税は即時発効、トランプ氏が2日発表後=ホワイ

ワールド

バンス氏、「融和」示すイタリア訪問を計画 2月下旬

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中