最新記事

米メディア

「ナチスでさえ化学兵器は使わなかった」レベルの大嘘を止める法

2017年4月12日(水)19時10分
クリス・リオッタ

ヒトラーでさえ化学兵器を使わなかった、と大失言をしたスパイサー報道官 Joshua Roberts-REUTERS

<「私の大統領就任式の参加者は史上最大だった」に始まり最近の「ヒトラーでさえ化学兵器を使わなかった」まで、平気で嘘を振りまくトランプとそのスタッフに対抗するため、アメリカのテレビ局が嘘つくそばからテロップで真実を流し始めた>

偽ニュースやオルタナティブ・ファクト(もう1つの事実)があふれて何が本当かわからない世の中で、テレビ画面の下に流れるテロップが重要な役割を果たし始めている。ドナルド・トランプが大統領のアメリカで、テロップが嘘を暴いてくれるようになったのだ。

テロップを流すのは、テレビ局のスタジオでニュース画面をフォローする技術系スタッフやプロデュサーのアシスタント。政治家やスタッフが嘘をついたり事実を歪曲したりすれば、彼らがリアルタイムで誤りを正す。

たとえば11日にホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官が、シリアのアサド政権が民間人を標的に化学兵器を使用したとされる問題に関連して、「ヒトラーでさえ化学兵器を使わなかった」と発言して世界を驚愕させたとき。米MSNBCのスタッフはすぐにテロップで「ヒトラーはガス室で何百万人も殺害した」と流した。ホワイトハウス報道官の発言と同時に「こいつはほら吹き」という字幕を入れるようなものだ。

「ヒトラーでさえ化学兵器は使わなかった」というスパイサーの言葉の後ろに(ヒトラーはガス室で数百万人を殺した)と訂正がある

スパイサーの大失言はその発言を一刀両断するテロップが写った画面の画像とともに瞬く間にインターネットで拡散し、世界中の人権活動家や団体は今度こそ彼をクビにすべきだと怒り狂った。

テロップが大活躍するトランプ政権

各テレビ局は市民が偽情報を事実と受けとめないようにするため、トランプ政権が発信する偽ニュースをテロップで訂正し始めた。例えば、これまでテロ事件を十分報じてこなかったとホワイトハウスから名指しで批判されたCNNは、実際には「多くのテロを取り上げてきた」と反論のテロップを流した。

トランプ大統領就任以前からその発言を訂正するおびただしい数のテロップを流してきたCNNは、トランプから毛嫌いされている。

2017年の今、テロップによるファクトチェックは視聴者が騙されないようにするために不可欠な存在だろう。

テレビでしゃべる政治家は、もっと慎重に言葉を選らんだほうがいいかもしれない。下手なことを言うと、誤りを指摘するテロップが顔の真下に出てしまうのだから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中