決算発表で株価はどう動くか、決算前のチャートから読み解く
決算前の値動きは「長期」と「短期」で調べる
それでは、今回のテーマである「決算前の値動き」について見ていきましょう。
値動きはチャートで視覚化したほうがわかりやすく、それによって、決算前における投資家の期待の「高さ・低さ」を読み取れます。たとえば、株価が上昇している企業に対しては、次の決算に期待している投資家が多い、ということです。
決算前の値動きを調べる際、多くの投資家は短期チャートを見ていることでしょう。つまり、「決算直前」の値動きだけを注視しています。それは、決算発表の1週間ぐらい前から「決算を意識した買い(売り)」といったコメントがニュース内などから聞こえてくることもあり、決算絡みの値動きはこれくらいの時期からチャート上に現れる、と思っている投資家が多いからです。
ズバリそのとおり! 間違いではありません。
しかし、実は、長期チャート(1〜3年)で見るほうが、次の決算における「企業側に求められる期待」の高さ・低さを、全体像として把握することができるのです。したがって、ここまではまず、長期チャートからわかる決算前の値動きについて、順を追って見ていきましょう。
「長期チャート」から見る決算前の値動き
上の図①は、「無印良品」を展開する良品計画<7453>の長期チャートです。こんな身近な企業の株価が、わずか数年で3~8倍になっていることがわかります。驚きです。少し調べてみると、やはり業績の推移に比例するかのように株価が上昇していたことがわかりました(図②)。
しかし、2015年の後半から上昇はストップして、上値が重くなっています。だからといって下落するわけでもなく、図②の利益ベースのグラフを再三見直しても、業績は堅調に推移し、決して伸び悩んでいるわけではないようです。
■「織り込み済み」が見え隠れ
こうした状況は、長期チャートでしか気づくことができません。果たして、次に発表される決算で株価は上昇するのか? いくつかの疑問符が付き始めます。
良品計画の今期決算前における状況としては、過去の好決算の連続で投資家の期待が高まり過ぎている、それによって「企業側に求められる決算内容」の敷居が高くなっている、それゆえ、いざ好決算を発表しても事前の期待値で相殺されてしまう可能性が高い、といったことが言えるのです。
このように長期チャートからは、いわゆる「織り込み済み」という言葉が見え隠れし、並大抵の決算内容では株価が上がらない状況が、ひと目で伝わってくるのです。そして、こうした決算前の値動きは、「好決算なのに売られる」というパターンを演じることが多くなるわけです。
「短期チャート」から見る決算前の値動き
さて、2016年7月1日(金)、良品計画の2016年度第1四半期の決算発表がありました。
営業収益は対前年同期比+13%増、営業利益は同+20%増という好決算であるにもかかわらず、週明けの取引開始の初値は、前日比▲6%前後の下落でスタートすることになりました(図③)。
これについて、決算前の値動きとの因果関係を説明するには、前述した長期チャートの解説で事足りるでしょう。並大抵の決算では株価の上昇は見込めない、という判定だったのです。