株価が割安かどうかを見極める指標の「三角関係」
■変化しやすいPERと、一貫性のあるPBR
このようにPERとPBRは共通して、現在の株価に対して割高なのか割安なのかを判断する指標として用いられます。PERは会社の「純利益」、PBRは会社の「純資産」と現在の株価を比較しています。
ただし、毎年変化のある企業の利益面(フロー)から算出されるPERのほうが、PBRよりも数値が変化しやすく、何倍が適正値かという判断は曖昧です。一方で、企業の資産面(ストック)から算出されるPBRは相対的に変動が少なく一貫性があり、信頼性が高いといえます。たとえばPERが異常値となった場合など、PBRは補完的な投資尺度としても活用できます。
(参考記事)鵜呑み厳禁! 地味だけど堅実と言われる「割安株投資」の真実
ROEとの三角関係で「お宝銘柄」が見えてくる
PERとPBRを改めて確認したところで、ここからはROEとの関係について見ていきましょう。
ROE(Return on Equity=自己資本利益率)は、優良銘柄を見つけ出す際に有効な指標です。一般的には、ROEが高いほど、その企業は株主から集めた資金を元手にして利益を稼ぐ能力が高いと判断され、外国人投資家はROEを重要な指標としています。
ROE=当期純利益÷自己資本×100
PER、PBR、ROEという3つの指標の関係は、次の式で表すことができます。
PBR=PER×ROE
この式を使って、株価が割高か割安かを、より高い精度で判断することが可能になります。
■PBR 倍以下でも割安ではない例
先ほど、PBRは1倍以下が割安で、それ以上の銘柄は割高、とご説明しました。ではここで、たとえば、PBRが同じ0.8倍のA社とB社があるとします。PBR単独で見ると、PBR0.8倍は1倍割れで割安と判断できますが、これをPERとROEに分解して考えてみましょう。
A社:PBR0.8倍=PER4倍×ROE20%
B社:PBR0.8倍=PER20倍×ROE4%
PERが低いほど割安で、ROEは高いほど優良銘柄でしたので、A社はPBR、PERともに低くてROEが高いので、株価が割安でお得な「お宝銘柄」だといえます。一方のB社はPBRは低いものの、PERが高くてROEが低いので、割安でお得な銘柄とはいえないと判断できます。
■PBRが高くても割高ではない例
次に、PBRが高い場合はどうでしょうか。
C社:PBR2倍=PER10倍×ROE20%
D社:PBR2倍=PER200倍×ROE1%
C社は、PBRは高いものの、PERが低くてROEが高いので、株価が割高では決してありません。それに対してD社は、PBR、PERともに高くて、ROEが低いので、株価は割高と判断できます。
このようにROEを使うと、PBR、PERそれぞれ単独ではわからなかった銘柄の詳しい状況が見えてきます。3つの数字の関係から、より多角的な銘柄選びが可能となることが、おわかりになったのではないでしょうか。