最新記事

投資の基礎知識

株価が割安かどうかを見極める指標の「三角関係」

2017年3月2日(木)14時53分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

■変化しやすいPERと、一貫性のあるPBR

このようにPERとPBRは共通して、現在の株価に対して割高なのか割安なのかを判断する指標として用いられます。PERは会社の「純利益」、PBRは会社の「純資産」と現在の株価を比較しています。

ただし、毎年変化のある企業の利益面(フロー)から算出されるPERのほうが、PBRよりも数値が変化しやすく、何倍が適正値かという判断は曖昧です。一方で、企業の資産面(ストック)から算出されるPBRは相対的に変動が少なく一貫性があり、信頼性が高いといえます。たとえばPERが異常値となった場合など、PBRは補完的な投資尺度としても活用できます。

(参考記事)鵜呑み厳禁! 地味だけど堅実と言われる「割安株投資」の真実

ROEとの三角関係で「お宝銘柄」が見えてくる

PERとPBRを改めて確認したところで、ここからはROEとの関係について見ていきましょう。

ROE(Return on Equity=自己資本利益率)は、優良銘柄を見つけ出す際に有効な指標です。一般的には、ROEが高いほど、その企業は株主から集めた資金を元手にして利益を稼ぐ能力が高いと判断され、外国人投資家はROEを重要な指標としています。

 ROE=当期純利益÷自己資本×100

PER、PBR、ROEという3つの指標の関係は、次の式で表すことができます。

 PBR=PER×ROE

この式を使って、株価が割高か割安かを、より高い精度で判断することが可能になります。

■PBR 倍以下でも割安ではない例

先ほど、PBRは1倍以下が割安で、それ以上の銘柄は割高、とご説明しました。ではここで、たとえば、PBRが同じ0.8倍のA社とB社があるとします。PBR単独で見ると、PBR0.8倍は1倍割れで割安と判断できますが、これをPERとROEに分解して考えてみましょう。


A社:PBR0.8倍=PER4倍×ROE20%
B社:PBR0.8倍=PER20倍×ROE4%

PERが低いほど割安で、ROEは高いほど優良銘柄でしたので、A社はPBR、PERともに低くてROEが高いので、株価が割安でお得な「お宝銘柄」だといえます。一方のB社はPBRは低いものの、PERが高くてROEが低いので、割安でお得な銘柄とはいえないと判断できます。

■PBRが高くても割高ではない例

次に、PBRが高い場合はどうでしょうか。


C社:PBR2倍=PER10倍×ROE20%
D社:PBR2倍=PER200倍×ROE1%

C社は、PBRは高いものの、PERが低くてROEが高いので、株価が割高では決してありません。それに対してD社は、PBR、PERともに高くて、ROEが低いので、株価は割高と判断できます。

このようにROEを使うと、PBR、PERそれぞれ単独ではわからなかった銘柄の詳しい状況が見えてきます。3つの数字の関係から、より多角的な銘柄選びが可能となることが、おわかりになったのではないでしょうか。

(参考記事)知らなければ損? ROE(株価資本利益率)からわかる優良銘柄

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中