最新記事

シリア難民

ゲイ・コンテストに生きる希望を見出すシリア難民

2017年3月6日(月)15時15分
松丸さとみ

Mr Gay Syria-YouTube

シリア内戦から命からがらトルコへ逃れ難民生活を送っていた同性愛者の男性たちが昨年、「ミスター・ゲイ・シリア」コンテストを開催した。世界で一番魅力的なゲイ男性を決定する「ミスター・ゲイ・ワールド」へのシリア代表としての出場権を賭けた大会だ。

同性愛者に厳しいイスラム社会で、出場者たちがシリア難民としてではなく「ミスター・ゲイ・シリア優勝者」として世界大会開催地のヨーロッパを目指すドキュメンタリー映画が、世界で話題になっている。

なぜシリア難民がゲイ・コンテスト?

混乱の度合いを増すシリア内戦は、普通の市民でさえシリアでの暮らしは死と隣り合わせであろうことは想像に難しくないが、それが同性愛者となるとその恐怖は計り知れない。シリアの中央部と東部を掌握するISIS(自称イスラム国)は、これまで多くの同性愛者を、ビルから突き落として殺害するなど迫害してきた。またシリアでは同性愛が違法であるため、ISのこうした行為に限らず、同性愛者が嫌がらせを受けることが多いという。

【参考記事】シリアで起きていることは、ますます勧善懲悪で説明できない

そんな厳しい環境の中、なぜ「ミスター・ゲイ・シリア」を開催し、さらに映画まで制作することになったのだろうか?

ことの始まりは、トルコ・イスタンブールのLGBT(性的マイノリティ)支援グループでの集まりだ。かつては自身もシリア難民で、現在は独ベルリンのLGBT支援センターで働くマフムード・ハシノ氏が、ここでヘアドレッサーのフセインさんやシェフのオマルさん、そしてウィサムさんなどと出会った。そこでハシノ氏が、「ミスター・ゲイ・ワールド」へのシリア代表者を決める「ミスター・ゲイ・シリア」をイスタンブールで主催することを思いついたのだ。トルコで偶然出会った映画制作者のアイシェ・トプラク氏が、大会までの様子をドキュメンタリーとして撮影した。


iNewsによるとコンテストの内容は、人権に関する筆記パートと、歌や芝居による自己アピールのパート、そしてコスチュームのパートで構成された。「ミスター・ゲイ・ワールド」では通常、民族衣装やブーメランパンツ(ビキニパンツ)で審査されるパートがあるのだが、ハシノ氏は外見的な美しさではなく、シリアでの同性愛者の苦境を世界に向けて発信してくれる人を「ミスター・ゲイ・シリア」で見つけたいと考えていたという。

同性愛者は避難先のトルコでも苦境に

ただし、映画では出演者はほぼ全員、顔と身元を隠している。彼らが暮らすのは、シリアと比べ同性愛者に寛容とされるトルコのイスタンブールだが、前述のiNewsによると、それでもゲイのシリア難民の生活は安全とはほど遠い。2011年の調査では、84パーセントのトルコ国民が「LGBTが隣人であって欲しくない」と回答したという。ゲイの権利を訴える祭典プライド・パレードはかつて、イスタンブールで10万人程度集めていたが、ここ2年ほどは政府により禁止され、抗議に集まった人と警察との衝突が起こっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豪カンタス、ジェットスター・ジャパンから撤退発表 

ワールド

台湾、貿易協力は「中国より民主主義国と」 頼総統主

ビジネス

三井物産、4─12月期の純利益6.2%減 JA三井

ワールド

中国主席、ウルグアイ大統領との会談で「平等な多極化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 7
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 8
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 9
    共和党の牙城が崩れた? テキサス州で民主党が数十…
  • 10
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中