最新記事

アメリカ

「出産後3カ月無収入なぜ?」アン・ハサウェイが国連で訴え

2017年3月11日(土)09時30分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

連邦レベルで進歩が見られないなか、州レベルでは少しずつだが「家族を理由とする有給休暇の取得」に乗り出す動きが見られ始めた(支払われる給与は全額ではなく一部)。

全米ではカリフォルニア、ニュージャージー、ロードアイランドの3州の法律が順にそれぞれ6週間、6週間、4週間の有給休暇を規定。ニューヨーク州も2018年1月から家族を理由とする8週間の休暇取得を権利として認め、週の給与の50%を払うよう定める法律を段階的に施行予定で、2021年の時点で最終的に12週間、週の給与の67%の支給が実行されれば、全米で最も先進的な産休・育休制度になるという。サンフランシスコ市のように自治体単位で同様の制度を取り入れているところもある。

もちろん、法律で義務付けられていなくとも有給の産休・育休制度を設けている企業はある。ここ数年でアマゾンやネットフリックス、マイクロソフト、スターバックス、フェイスブックなど、特に西海岸の大企業でより寛大な制度を設ける動きが加速しており、なかには父親に有給の育休を認める企業も出てきた。

それでも、CNNによれば全米で有給の産休・育休を認めている企業は全体の20%に満たない。CNNの記事は、ある調査で父親の36%が職場でのポジションが奪われる怖さから育休は取得したくないと答えたことも紹介している。

ハサウェイは国連でのスピーチで、育児や家事が「女性の仕事」とされるステレオタイプから変えていかなければならないと訴えた。そうすることは、父親の存在価値をもっと尊重することでもある、と。

「産休制度に限らず、性別をベースにした政策というのは見かけが良いだけの鳥かごだ。......こうした政策は、女性は職場にとって不便な存在だという見方を生む。男性は、限られた生き方にがんじがらめにされているように感じるだろう」と、ハサウェイは語った。「女性を解放するためには、男性を解放しなければならない。......父親を軽視して母親に過剰な負荷をかけることを、どうして続けていかなければならないのか」

ハサウェイは、「お父さんが2人という家族にとって、『産休制度』は何の意味を為すのか」とも指摘した。アメリカでは養子縁組や同性婚、シングルマザーやファザーなど、家族の形態も多様化してきている。

ドナルド・トランプ米大統領は昨年、選挙キャンペーン中に「6週間の有給の産休制度」を公約したものの、その対象は「出産した女性」に限られており、父親や養子縁組で子供を設けた家族は適応外としていた。国際女性デーに男性の権利についても訴えたハサウェイの声は、トランプ政権に届いただろうか。

【参考記事】トランプにブーイングした「白ジャケット」の女性たち

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中