最新記事

アメリカ政治

トランプを追い出す4つの選択肢──弾劾や軍事クーデターもあり

2017年2月1日(水)19時52分
ローザ・ブルックス(米ジョージタウン大学法学部教授)

弾劾のいいところは、反逆であれ殺人であれ、議会は証拠がなくても手続きを進められるし、どんな些細なことも「重罪や軽罪」と見なすことができる(ビル・クリントン元大統領は、ホワイトハウスの元実習生モニカ・ルインスキーとの不倫疑惑をめぐり嘘をついたとして下院の弾劾決議を受けた)。逆によくないところは、上下両院の多数派をトランプの共和党が占めるため、議会が弾劾を可決する可能性が低いこと。民主党が議会で過半数を獲得すれば話は別だが、それには早くとも2018年の中間選挙まで待たねばならない。

【参考記事】ビル・クリントンの人種観と複雑な幼少期の家庭環境

いずれにしろ、弾劾には時間がかかる。たとえ議会が弾劾に大賛成でも、手続きには最低数カ月かかる。ましてトランプには核兵器の発射コードを預けてあるのだから、わずか2~3カ月でも永遠のように思える。トランプが核ミサイル発射を決断するまで、残された時間はどれほどあるのだろうか。

日々暗雲が漂うなか、世界の一部の人々は、合衆国憲法修正第25条を心の拠り所にしている。これが3つ目の選択肢だ。これまであまり注目されたことがなかったが、この条項には「副大統領と......各省長官の過半数」が、大統領には「職務上の権限と義務を遂行できない」と判断した場合、「副大統領が直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行する」と明記されている。

最後は軍事クーデター

これならマイク・ペンス副大統領の野心もくすぐるだろう。ペンスはいつか大統領になりたいと思っているはずだ。彼は政治家として、必ずしも穏健派ではない。絶えず同性愛者を差別する政策を掲げ、気候変動にも懐疑的。それでも彼は、狂ってはなさそうだ。(「狂っているかいないか」は、アメリカの政治家を評価する新基準だ)

ペンスにはきっと、アメリカにとって重要な同盟関係を次々と骨抜きにし、核の先制使用もありうるというトランプの軽挙妄動に反対するくらいの分別がある。最悪の事態になれば、他の閣僚たちもトランプを追放して、ペンスを大統領にするだろう。

4つ目の選択肢は、アメリカではまさかあり得ないと思われるかもしれないが、軍事クーデター、或いは米軍の上層部が大統領命令の一部に従うのを拒否することだ。

文民統制の原則は、米軍の内部で深く根付いており、党派を超えたプロ意識を誇りにしてきた。一方、軍に関する決定では、制服組よりも、法律違反を厭わない高位の政治家の方が遥かに大きな権限を持つことも周知の通りだ。例えば1期目のジョージ・W・ブッシュ政権は、国内最高の軍事法律家から集団で公式な抗議を受けても、拷問をやめなかった。米軍の上層部が水責めなど過酷な尋問方法に反対しても、同政権は軍の意向を無視して、CIAや丸投げした民間企業に卑劣な仕事をさせた。両者のギャップが大きければ大きいほど、対立は生まれやすくなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、銀行の流動性支援強化で詳細発表

ワールド

韓国の尹錫悦前大統領に無期懲役、内乱首謀で地裁判決

ビジネス

フィリピン中銀、6会合連続利下げ 先行き不透明

ビジネス

インタビュー:1%への利上げ、無担保コール急低下の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中