最新記事

ニュースデータ

世界トップの教育水準を労働生産性に転換できない日本の課題

2016年12月28日(水)14時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 確かに日本は、高度な教育で育て上げたマンパワーを十分に活用できていない国だ。女性の社会進出への障害、高学歴人材の失業(ワーキングプア化)といった事実を想起すれば、十分に理解できる。

 前者について言うと、結婚適齢期にかけて女性の正社員数はかなり減少する。<表1>によると、2010年に20代後半の女性正社員は141万人だったが、5年後、この世代が30代前半になった2015年には116万人にまで減っている。この間に、女性の正社員が2割弱も減ったことになる。

maita161228-chart02.jpg

 高度なスキルを持つ専門・技術職の減少も大きい。もっと細かい職業分類でみると、女性の医師に至っては、20代後半から30代前半にかけてほぼ半減する(総務省『就業構造基本調査』)。これは女性の能力の浪費以外の何物でもない。労働生産性が高いノルウェー(図1を参照)では、このような浪費はしていないだろう。

【参考記事】このままでは日本の長時間労働はなくならない

 長時間の「痛勤」地獄も、労働生産性を下げている。有給取得率の低さに象徴される、休むことを知らぬ働き方は、斬新なイノベーションの創出を阻害している。こうした労働環境の歪みの是正も必要だ。

 日本は今後、労働力が減少するなかで社会を効率良く運営していくことを求められているが、国民の(高い)潜在能力をもっと引き出し、労働生産性を高める余地は多分にある。将来的に移民の受け入れは避けられないとしても、単純にインプット(労働力の投入量)を増やすこと以上に、できることはまだまだあるはずだ。

<資料:OECD「PISA 2015」、
   総務省統計局『世界の統計 2016』>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中