最新記事

欧州難民問題

イタリアの移民が過去最高に 3年で50万人超が流入

2016年12月31日(土)20時30分

12月30日、イタリア内務省は、海を渡って同国に到着した移民が昨年より2割増えて、過去最高となったと発表した。写真は3月23日、ローマのビットリアーノ前で撮影(2016年 ロイター/Stefano Rellandini)

イタリア内務省は30日、今年海を渡ってイタリアに到着した移民が昨年より2割増えて、過去最高となったことを明らかにした。過去3年間では計50万人超が流入したという。

内務省の報道官は、移民数の急増による危機に対処する上で、欧州連合(EU)加盟国の協力が欠けていると、あらためて指摘した。

内務省で移民システムを担当する責任者のマリオ・モルコーネ氏はロイター通信の取材に対し「あらゆる警戒がされていたにもかかわらず、今年は移民の流入数が記録的な多さだった。イタリアは大いなる尊厳とともに、それに持ちこたえた」と述べ、「それは欧州としての結束が十分にない中での対応だった」とした。

欧州連合(EU)加盟国は、2015年に4万人の亡命希望者をイタリアから受け入れると約束したが、今のところイタリア以外の国に移住したのは2654人にとどまっている。いくつかの国は受け入れを一切認めなかった。

ギリシャを目指して海を渡る移民を抑制するための合意がEUとトルコの間で締結されて以降、リビアを主な拠点に男や女、子供を危険な船に押し込める密航斡旋業者は、イタリアに目を向けるようになった。

イタリア内務省によると、船でイタリアに到着した移民は今年18万1000人を超え、昨年に比べて18%近く増えたと述べた。16年の人数には12月30日と31日に到着する人数は含まれていない。

14年の初め以降、北アフリカ地域から50万人を超える移民が海を渡ってイタリアに到着した。多くは戦争、貧困や政治的弾圧を逃れてきており、来年もその勢いが収まる兆しはない。

航海条件が悪い中、今月は8000人近くの移民が到着した。今年の10月には単月で最高記録となる約2万7400人が到着した。全体の2割超はナイジェリアからで、続いてエリトリア、ギニア、コートジボワール、ガンビアからの移民が多かった。

13年の8倍以上の人数に当たる約17万5000人の亡命希望者が現在、イタリアの避難所で生活している。政府は20万人を収容可能だとしているが、来年には新たな避難所を設置するかどうかを決断しなければならない。

国際的な庇護を拒否された亡命希望者は通常、欧州で最も判決に時間がかかるとされるイタリアの司法制度に基づいて訴えを起こすことになる。何年もかかる可能性がある最終判決を待つ間は、政府が財政的に支える避難所に留まることが可能だ。

今年は地中海で命を落とす移民の数が最も多く、国際移住機関(IOM)によるとその数は5000人近くに上るという。



[ローマ 30日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米メタ、メタバース事業の予算を最大30%削減と報道

ビジネス

米新規失業保険申請、2.7万件減の19.1万件 3

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ワールド

米代表団、来週インド訪問 通商巡り協議=インド政府
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 9
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 10
    白血病細胞だけを狙い撃ち、殺傷力は2万倍...常識破…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中