最新記事

インターネット

違法ダウンロード情報で新たな広告市場できるか

2016年9月23日(金)08時00分

 この問いは、こうした新興企業と著作権侵害をめぐる倫理的な議論の核心を突いている。

 全米放送事業者協会(NAB)を含めた業界大手の一部は、ロイターの取材に対し、マインドシェアへの不快感を表明するものの、新たな動きに対して法的措置は取っていない。

「協会会員は、コンテンツ泥棒や著作権侵害を許容する企業との事業提携について、引き続き反対する」とNABスポークスマンのデニス・ウォートン氏は語る。

 アンドレ・スワンストン最高経営責任者(CEO)は、Tru Optikが著作権侵害を是認や許容しているわけではないと話す。

 同社のデータベースは、違法ダウンロードを行った人々を、名前ではなくIPアドレスなど匿名のデータポイントによって特定する。大手広告主は、彼らが頻繁に訪れるサイトに対してターゲット広告を打つことができる。同社によれば、不法コンテンツを共有するサイトや、不法コンテンツそのものに、広告を掲載することはないという。

 スワンストンCEOによれば、違法ダウンロードを行う人々は、一方で音楽や映画の大量購入者でもあるという。

「よりよい視聴者データ、そして視聴者にマーケティングする機会を提供することで、メディア企業が著作権侵害を軽減し、コンテンツを収益化する助けになると信じている」と同CEOは語る。

売り口上

 米著作権法は、知的財産の無断使用を禁じており、コンテンツの違法ダウンロードは、罰金刑や懲役刑に科せられる可能性がある。同法では、Tru Optikなどの企業による、不法行為を行うユーザー情報の提供といった行為については規定していない。

 NABなどの業界団体は、この端緒についたばかりのビジネスを抑制するための規制や法律改正を求めるロビー活動を行っていない。広告を監視する米連邦取引委員会(FTC)も特にこの問題に取り組んではおらず、この記事についてのコメント依頼にも回答がなかった。

 つまり今のところ、新興企業にとっての最大の障害は、顧客となる企業がどの程度の安心感を抱くかという点なのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中