違法ダウンロード情報で新たな広告市場できるか
この問いは、こうした新興企業と著作権侵害をめぐる倫理的な議論の核心を突いている。
全米放送事業者協会(NAB)を含めた業界大手の一部は、ロイターの取材に対し、マインドシェアへの不快感を表明するものの、新たな動きに対して法的措置は取っていない。
「協会会員は、コンテンツ泥棒や著作権侵害を許容する企業との事業提携について、引き続き反対する」とNABスポークスマンのデニス・ウォートン氏は語る。
アンドレ・スワンストン最高経営責任者(CEO)は、Tru Optikが著作権侵害を是認や許容しているわけではないと話す。
同社のデータベースは、違法ダウンロードを行った人々を、名前ではなくIPアドレスなど匿名のデータポイントによって特定する。大手広告主は、彼らが頻繁に訪れるサイトに対してターゲット広告を打つことができる。同社によれば、不法コンテンツを共有するサイトや、不法コンテンツそのものに、広告を掲載することはないという。
スワンストンCEOによれば、違法ダウンロードを行う人々は、一方で音楽や映画の大量購入者でもあるという。
「よりよい視聴者データ、そして視聴者にマーケティングする機会を提供することで、メディア企業が著作権侵害を軽減し、コンテンツを収益化する助けになると信じている」と同CEOは語る。
売り口上
米著作権法は、知的財産の無断使用を禁じており、コンテンツの違法ダウンロードは、罰金刑や懲役刑に科せられる可能性がある。同法では、Tru Optikなどの企業による、不法行為を行うユーザー情報の提供といった行為については規定していない。
NABなどの業界団体は、この端緒についたばかりのビジネスを抑制するための規制や法律改正を求めるロビー活動を行っていない。広告を監視する米連邦取引委員会(FTC)も特にこの問題に取り組んではおらず、この記事についてのコメント依頼にも回答がなかった。
つまり今のところ、新興企業にとっての最大の障害は、顧客となる企業がどの程度の安心感を抱くかという点なのかもしれない。