最新記事

AI

カスタマーサポートでチャットボットの普及が見込まれる理由

2016年8月8日(月)17時20分
Team Nelco(Nissho Electronics USA)

理由2. 答えが明確

 次に、それぞれの会話自体の答えが明確であることが挙げられます。カスタマーサポートは、特定のサービスやユーザーの問題に対して、ほぼ間違いなく正しい答えというものが存在しています。問い合わせを行う人の特徴や嗜好に応じて、答えが変わることもあまりありません。このように、答えが明確で、個人の嗜好や特徴に依存しないため、チャットボットの開発の難度が他と比べて低いのが特徴です。

 個人の嗜好や特徴に依存する例として、レストランの推薦ボットを考えてみましょう。今いる自分の近くのカフェを探したいと思った場合、人によって好みは様々です。人によっては静かなカフェで本を読みたい人、パソコンで作業するためコンセントと高速なインターネット接続を求める人、とにかく美味しいコーヒーが飲みたい人、ケーキも欲しい人など、そのぞれの人とシーンによって推薦すべきお店が変わってきます。 利用シーンは限られていたとしても、答えが人によって違うチャットボットは開発が難しく、多くの人が便利だと感じてくれるまで質を上げるのは大変です。

理由3.すでにカスタマーサポートに人工知能への導入の動きがある

 カスタマーサポートを行う人のサポートツールとして、すでに人工知能が導入されています。IBMが開発している人工知能のWatsonは、みずほ銀行などのコールセンターでも導入されています。音声認識によって問い合わせ内容を自動的に入力したり、またはオペレーターが手動で打ち込むことで、問い合わせの回答の候補を表示することで、オペレーターの回答を手助けしています。

 また、シリコンバレーのスタートアップのWise.ioは、過去の顧客からの問い合わせ対応とその結果を元に、人工知能を用いてどの問い合わせを誰が担当すべきか判断し、対応の優先順位をつけて自動的に割り振るツールを提供しています。このように、カスタマーサービスに人工知能を導入しようとする動きは広くあります。

 現在はオペレータのサポートをしている人工知能が、将来的には顧客とのやりとりを直接するようになるというのは、現在の取り組みの延長線上にあります。

理由4. 企業のメリットが明確

 カスタマーサポートの導入は、カスタマーサポートが人から、チャットボットに置き換わることで、自動化によるコストの削減という非常に分かりやすいメリットがあります。 現在、いろいろなチャットボットが開発されていますが、どうやって収益を上げるかは実はまだ手探りの状態です。さらに最もユーザーの多いFacebook Messangerは、広告を送るチャットボットは規約で禁止しています。

 新しいプラットフォームをスパムや広告で汚さないためのルールですが、企業や開発者からすると開発のメリットが見えにくい状態です。カスタマーサポートは、開発のメリットが明確であるため、普及がしやすいのです。

理由5. 何度も同じやり取りを繰り返すため、データマイニングしやすい

 チャットボットでは、蓄積した会話ログを分析・活用することで、チャットボット自体の精度を改善することが大切です。カスタマーサポートは、何度も同じような問い合わせがきます。他の会話のシーンと比べて、同じような会話を繰り返しています。会話ログを分析することで、カスタマーサポートの方法を改善したり、データマイニングが行うことがやりやすい分野です。

 また、顧客は、丁寧に自分の問題を伝えたり、自分が抱える問題を正しく理解しているとは限りません。 簡単な例を考えると、「銀行の手数料を教えて欲しい」という質問が来た場合、曜日、同行間や他行、国際送金などの条件により大きく変わるため、一概に答えることはできません。 このような場合も膨大なログを分析すると、「銀行の手数料を教えて欲しい」と顧客が聞いている場合、どの条件に対してい聞いている可能性が高いかや、どのように返すのが最も顧客満足を高めることができるかを学んで改善することができます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中