カスタマーサポートでチャットボットの普及が見込まれる理由
理由2. 答えが明確
次に、それぞれの会話自体の答えが明確であることが挙げられます。カスタマーサポートは、特定のサービスやユーザーの問題に対して、ほぼ間違いなく正しい答えというものが存在しています。問い合わせを行う人の特徴や嗜好に応じて、答えが変わることもあまりありません。このように、答えが明確で、個人の嗜好や特徴に依存しないため、チャットボットの開発の難度が他と比べて低いのが特徴です。
個人の嗜好や特徴に依存する例として、レストランの推薦ボットを考えてみましょう。今いる自分の近くのカフェを探したいと思った場合、人によって好みは様々です。人によっては静かなカフェで本を読みたい人、パソコンで作業するためコンセントと高速なインターネット接続を求める人、とにかく美味しいコーヒーが飲みたい人、ケーキも欲しい人など、そのぞれの人とシーンによって推薦すべきお店が変わってきます。 利用シーンは限られていたとしても、答えが人によって違うチャットボットは開発が難しく、多くの人が便利だと感じてくれるまで質を上げるのは大変です。
理由3.すでにカスタマーサポートに人工知能への導入の動きがある
カスタマーサポートを行う人のサポートツールとして、すでに人工知能が導入されています。IBMが開発している人工知能のWatsonは、みずほ銀行などのコールセンターでも導入されています。音声認識によって問い合わせ内容を自動的に入力したり、またはオペレーターが手動で打ち込むことで、問い合わせの回答の候補を表示することで、オペレーターの回答を手助けしています。
また、シリコンバレーのスタートアップのWise.ioは、過去の顧客からの問い合わせ対応とその結果を元に、人工知能を用いてどの問い合わせを誰が担当すべきか判断し、対応の優先順位をつけて自動的に割り振るツールを提供しています。このように、カスタマーサービスに人工知能を導入しようとする動きは広くあります。
現在はオペレータのサポートをしている人工知能が、将来的には顧客とのやりとりを直接するようになるというのは、現在の取り組みの延長線上にあります。
理由4. 企業のメリットが明確
カスタマーサポートの導入は、カスタマーサポートが人から、チャットボットに置き換わることで、自動化によるコストの削減という非常に分かりやすいメリットがあります。 現在、いろいろなチャットボットが開発されていますが、どうやって収益を上げるかは実はまだ手探りの状態です。さらに最もユーザーの多いFacebook Messangerは、広告を送るチャットボットは規約で禁止しています。
新しいプラットフォームをスパムや広告で汚さないためのルールですが、企業や開発者からすると開発のメリットが見えにくい状態です。カスタマーサポートは、開発のメリットが明確であるため、普及がしやすいのです。
理由5. 何度も同じやり取りを繰り返すため、データマイニングしやすい
チャットボットでは、蓄積した会話ログを分析・活用することで、チャットボット自体の精度を改善することが大切です。カスタマーサポートは、何度も同じような問い合わせがきます。他の会話のシーンと比べて、同じような会話を繰り返しています。会話ログを分析することで、カスタマーサポートの方法を改善したり、データマイニングが行うことがやりやすい分野です。
また、顧客は、丁寧に自分の問題を伝えたり、自分が抱える問題を正しく理解しているとは限りません。 簡単な例を考えると、「銀行の手数料を教えて欲しい」という質問が来た場合、曜日、同行間や他行、国際送金などの条件により大きく変わるため、一概に答えることはできません。 このような場合も膨大なログを分析すると、「銀行の手数料を教えて欲しい」と顧客が聞いている場合、どの条件に対してい聞いている可能性が高いかや、どのように返すのが最も顧客満足を高めることができるかを学んで改善することができます。