最新記事

オピニオン

米名門大学はアジア系を差別している

2016年6月22日(水)15時14分
エリザベス・スラッテリー

 訴状でグループは、大学はステレオタイプや偏見に基づいてアジア系アメリカ人の出願者をはねのけていると主張している。例えば、アジア系アメリカ人は「創造性に乏しい」「いい子だが秀でたものがない」「批判的思考の技術を欠く」「指導的立場の経験がない」そして「課外活動をせず勉強ばかりしている」という具合。

 入試事務室の選考担当者たちはアジア系の出願者についてこんなメモを残している。「彼は物静かで、もちろん医者志望だ」。彼女の「成績と願書を見ると、まさにアジア系の典型。数学の成績は抜群だが、英語はまるでダメだ」。

 これら名門校の入試方針は「秘密のベールに包まれて」おり、アジア系に対する差別もその気になればやりたい放題。エール大学の法科大学院は最近、入試選考の記録を破棄し始めたという。おそらくは、人種などの合格基準を開示させられるのを避けるためだ。

 こうした差別的な方針はアメリカの教育界にとっても損失だと、グループは主張する。アメリカの高等教育機関の実力主義の建前に対する信頼も失われる。

 一方、出願者たちも数少ない「アジア系アメリカ人枠」を奪い合って過大なプレッシャーに晒されている。ストレス増加、自殺率の上昇。自分の人種を隠そうとし、自尊心が低く、人種絡みのけんかや憎しみも増える......。

差別是正措置は、今では害のほうが大きい

「差別是正措置(アファーマティブ・アクション)」に始まる人種を考慮した入試方針は、マイノリティーを優遇し、その地位を押し上げようという善意から生み出されたものだった。しかし昨今では、益よりも害が増しているという見方もある。

 人種や民族性を理由にゲタを履かされ入学した学生が結局は落第していくことも多い。「不釣り合いな」大学に入って同級生についていこうと必死に頑張った末に。

 そもそも、連邦政府から助成金を受ける大学がどうやって、憲法で保障された平等な権利を侵害することなく人種の割り当てを行っているのだろうか?

 1978年には「カリフォルニア大学理事会対バッキー」裁判で、「民族的に多様性のある学生集団から得られる教育的利益」を推進する目的であれば、人種により優遇をしても構わないと、連邦最高裁判所が判決を下した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中