最新記事

人道問題

北朝鮮がアフリカに犯罪者数百人を「輸出」疑惑

2016年5月19日(木)16時30分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

画像 © 2016 DigitalGlobe, GeoEye 地図データ © 2016 Google

<北朝鮮が自国の犯罪者を西アフリカの友好国、赤道ギニアに送り込んでいると報じられた。北朝鮮人たちはある施設(上の衛星写真)で強制労働をさせられているというが、果たしてその実態は?>

 北朝鮮が、自国の犯罪者を労働力として西アフリカの赤道ギニアに輸出、いわば「島流し」をしているとの疑惑が浮上している。

 疑惑を報じたのは、スペインのバレンシアに本部を置く赤道ギニア系のインターネットニュースサイト「ロンべ・ディアリオ」。

 同サイトは、赤道ギニアの首都マラボ近郊の犯罪都市、サンティアゴ・デ・バネイとレボラの間にある農場に北朝鮮から労働者が派遣されていると伝える。疑惑のある施設の衛星写真を見る限り、何の変哲もないように見えるが、中にいる関係者に話しかけようとすると、逃げていく。その後、施設警備員がやって来て「話しかけるな。写真も撮るな」と警告される。

国内では政治犯に「被ばく強制労働」も

 この施設で、北朝鮮から送り込まれた数百人の犯罪者が収容され、強制労働に従事させられているというのだ。にわかには信じがたい話だが、北朝鮮で、拘禁者に強制労働を課すのは、国際問題になるほど広く知られている。

 また、政治犯が「被ばく強制労働」まで強いられているというレポートさえある。北朝鮮当局が、遠いアフリカの地でも自国民の人権を侵害しているとするなら、見過ごせない問題だ。

(参考記事:北朝鮮、核施設で「強制被ばく労働」させられる政治犯たち

 彼らの犯歴は、軽犯罪から政治犯罪に至るまで罪状は様々で、赤道ギニアで働くことを条件に刑期が5年から10年短縮される。強制労働を強いているのが、赤道ギニアなのか、それとも北朝鮮なのかは不明だ。

 北朝鮮の拘禁施設、とりわけ政治犯収容所の劣悪な実態と人権侵害は、筆舌に尽くしがたいものがある。どれほど劣悪な環境であろうと、生きる望みがあるかもしれない赤道ギニアでの強制労働を選ぶのは、わからないでもない。

(参考記事:赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた...北朝鮮「政治犯収容所」の実態

逃げ出せない離島で拷問も

 赤道ギニア政府は、北朝鮮政府との協定に基づき、土地を貸し出しているが、同国政府は、協定の存在を否定している。国際問題になることを警戒して否定しているようだ。

 施設の衛生状態は非常に悪く、収監者にはまともな食事が与えられていない。さらに、赤道ギニアの軍人の監視を受け、拷問を加えられることもあるという。また、施設は大西洋に浮かぶビオコ島にあり、アフリカ本土から32キロ離れている。逃げ出すのも困難だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ財務省、26年の成長率予想を2.0%に据え置き

ワールド

インドネシア大統領のおいが中銀副総裁に、議会が承認

ビジネス

基調インフレ指標、12月は3指標そろって2%下回る

ビジネス

英小売店頭価格、1月は前年比1.5%上昇 2年ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 8
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中