G7外相会合に、中国激しい不快感
南シナ海問題を論ずることこそ、地域の平和を乱す
中国は一貫して、南シナ海問題をG7で取り上げることを激しく非難しており、「G7でこの話題を取り上げることこそが、逆に地域の平和を乱す」ものとしている。
4月8日にも、中国の王毅外相がドイツのシュタインマイヤー外相と会談したあとの共同記者会見で「われわれは一部の国が政治的な理由から、南シナ海にわざといざこざを引き起こし、一方の肩を持って緊張を作り出すことを認めない」と強い語調で表明したが、この「一部の国」とは「日本とアメリカ」を指している。
事実、国名を名指しした「評論」は中国のネットに溢れており、「アメリカがアジア太平洋におけるリバランス政策を取っているため、南シナ海問題に関して言いがかりをつけ、アジア回帰のための口実にしている」という論評が目立つ。
日本はアメリカに追随しているので、南シナ海問題で歩調を合わせ中国に脅しをかけようとしているとしている。アメリカがオーストラリアやフィリピンなどと合同軍事演習を展開して中国を国際的に孤立させようとしており、日本の安倍政権はアメリカの軍事的野心を達成するために憲法9条を変えようとしており、安保関連法案はその第一歩だと糾弾。
広島宣言
もしG7外相会合閉幕に当たって採択される「広島宣言」に、南シナ海問題が含まれていれば中国は黙っていないという勢いで、中国は広島宣言の成り行きを見守っていた。
しかし会合期間中、南シナ海問題に関して討議はされたが、広島宣言自体はあくまでも核軍縮と不拡散に特化した独立文書になっていた。
11日午後に閉幕したG7外相会合が「核のない世界」に向けた決意を表明した広島宣言では、「原爆投下を極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難」と表現して核軍縮の必要性を訴え、「各国の指導者に被爆地の広島や長崎への訪問を促す」としている。
南シナ海問題に関して盛り込まれていないのは、中国への配慮だろう。
広島宣言とは別に出された共同声明にも書かれておらず、それらと独立して出された海洋の安全性に関する声明においてのみ、「ひっそりと」明示されただけだ。
中国の中央テレビ局CCTVでは、南シナ海問題を何としても取り上げようとしているのは、あくまでもアメリカと日本で、ヨーロッパなど他の参加国は中国と友好的なので、本当は南シナ海問題など取り上げたくなかったのだと報道している。
特にヨーロッパ諸国にとって南シナ海問題は大きな問題ではなく、むしろテロの脅威の方が圧倒的に大きく、いやいや日米にお付き合いしているに過ぎないと、得意げだ。このことを証拠づけるために、わざわざG7外相会合前にドイツのシュタインマイヤー外相を北京に招聘し、共同記者会見を開いて、シュタインマイヤー外相と肩を並べる形で「G7外相会合で南シナ海問題を取り上げることに絶対反対」と強調したものとみなすべきだろう。