最新記事

自動車

震災対策に揺れる自動車産業、コスト競争とのせめぎ合いに直面

2016年3月20日(日)19時33分

 リスク分散のため、ドイツの工場でも同顔料の生産を開始。震災前は世界の半分以上を占めていた日本での在庫を最近は40%に抑え、残りは米国や欧州、中国を含むその他の地域に置いている。

「見える化」を徹底

 自動車一台に使われる部品はおよそ3万点あると言われ、完成車メーカーに至る供給網は部品を直接納める1次仕入れ先から2次、3次と何層にも広がる。複数社から同じ部品を仕入れてリスク分散したつもりでも、元をたどれば原料や素材が同じ会社だったケースもあり、メルクなどの事例は原材料までさかのぼって情報を把握する必要性も各社に痛感させた。

 当時の日産自動車<7201.T>は2次仕入れ先以下の部品と1次仕入れ先の部品・車種との紐づけができていなかったため、震災後、生産場所など2次以下の部品情報から1次部品、車種へと逆引きできるデータベースを作成した。国内では5000品目が対象で、部品によっては10次まで把握できているという。

 トヨタ自動車<7203.T>も1次仕入れ先を通じて2013年中に調査を終え、供給網の「見える化」に取り組んだ。何次までさかのぼるかは部品によるが、最低3次までの情報を網羅し、約6800品目の生産場所など延べ65万拠点の情報を有するデータベースを構築した。

 だが、こうしたデータベースも完璧とは限らない。安くて高品質の製品を常に要求される部品会社にとって、どこから何を調達しているかなどの取引先情報は本来、公開できないからだ。日産自も、まだ材料レベルでは詳細を把握できていないものもあるとしており、供給網の「見える化」の作業はなお続いている。

国際競争力への懸念

 トヨタは今年2月、震災後初めて国内すべての車両組立工場の稼働を6日間停止した。グループ企業で爆発事故が起き、エンジンなどに使う特殊な鋼材の供給が止まったためだ。代替生産を依頼したが十分な量が確保できず、想定していたバックアップ態勢がまだ十分ではなかったことが明らかになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、ハードテクノロジー投資のVCファンド設立=国

ワールド

金・銀が最高値、地政学リスクや米利下げ観測で プラ

ワールド

中国、26─30年に粗鋼生産量抑制 違法な能力拡大

ビジネス

26年度予算案、過大とは言えない 強い経済実現と財
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中