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共和党エスタブリッシュメントはなぜ見捨てられたのか

2016年3月11日(金)20時00分
ロバート・ライシュ(元米労働長官)

 最後に、君たちは経済を操作して自分だけが儲けたため、かつてない規模の政治的反感を買ってしまった。人々は今、貿易や移民、グローバリゼーションに対して反感を持ち、そして共和党エスタブリッシュメント(保守本流)に怒りを感じている。

 これまで以上に必死に働いているのに成果が得られず、深刻な経済的不安を抱える数百万人のアメリカ人たちの、抑圧された怒りとフラストレーションがついに噴出した。アメリカの政治は、不満と罵声がうずまく汚水タンクと化してしまった。

 とりわけ共和党の政治家たちは、偏見や憎悪、そしてウソの汚泥に首まで浸かっている。彼らはアメリカを、人種と民族、宗教によって分断しようとしている。民主主義と良識の範として、かつてアメリカが世界に誇った道徳的権威が危険にさらされている。それは、君たちの会社にとっても決して好ましいことではない。

 君たちが生み出す不確実性もまたしかりだ。怒りに基づく政治は、いつ何どき、どんな方向に向くかわからない。企業経営者としての君たちは本来、政治の安定性と予見可能性を何より求める立場であるにもかかわらず、だ。

 おわかりだろうか? 君たちは、自ら仕掛けた罠にはまったのだ。君たちが目先の利益を得るために共和党に注ぎ込んだ金は無駄になろうとしている。

 急成長する経済からの自分の取り分を少し減らして、中間所得層を大きく成長させていれば、君たちはいまよりもはるかに繁栄していただろう。

 君たちのお金に毒されていない政治体制――すなわち、安定して穏健で、中間所得層のニーズに応える政治体制をつくっていれば、君たちもより良い結果を得ていたはずだ。

 しかし、君たちは利己的で強欲で、目先の利益のことしか考えていなかった。

 君たちは、前世代の保守本流が持っていた価値観を忘れてしまった。前世代は、世界恐慌と第二大戦がもたらした荒廃を目撃し、戦後は輝かしい中産階級の形成を助けた。

 あの世代とて、寛容や社会的責任を理由に行動していたわけではなかったが、すそ野の広い繁栄こそが、彼ら自身の事業にとっても長期的に良い結果をもたらすことを正しく理解していた。

 さて、君たちはどうする。政治家と取引するための資金を引き揚げ、アメリカの民主主義を回復し、所得や富、政治力で広がる格差の是正することで、現在の混乱を収拾する気になってくれただろうか? 

 それとも、まだ納得してもらえないだろうか?

*筆者は、カリフォルニア大学バークレー校公共政策大学院教授。ビル・クリントン政権で労働長官を務めた

Robert Reich is the Chancellor's Professor of Public Policy at the University of California at Berkeley. He served as Secretary of Labor in the Clinton administration

This article first appeared on RobertReich.org.

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