最新記事

G20

注目される積極財政論、日本が抱える格下げリスク

大規模な財政出動や消費再増税見送りが日本国債の格下げにつながる可能性も

2016年2月26日(金)10時51分

2月25日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に向けて、財政政策の注目度が高まってきた。先進国で実施してきた金融緩和政策の限界点が意識され出す中、景気下振れを防ぐ役割が期待されている。だが、日本では、財政状態のさらなる悪化や、国債の格下げなどリスクも大きい。写真は都内で2011年8月撮影(2016年 ロイター/Yuriko Nakao)

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に向けて、財政政策の注目度が高まってきた。先進国で実施してきた金融緩和政策の限界点が意識され出す中、景気下振れを防ぐ役割が期待されている。だが、日本では、財政状態のさらなる悪化や、国債の格下げなどリスクも大きい。円債市場の「警報機能」が事実上喪失しているとの声もあり、財政規律の緩みという危険も付きまとう。

財政出動の余裕乏しいG20

 
 民間が借りないのなら、政府が借りるしかない。これが財政政策である。企業や家計がリスクに対し消極的な場合、政府が借金してでも投資をして、民間に需要をもたらす。その投資が起点となり、連鎖的に需要が生まれ、景気が改善するのがベストシナリオだ。

 今週26─27日に中国の上海で開かれるG20に向けて、財政政策論議が活発化している。未曾有の金融緩和を行っても、足元の世界経済はもたつきが目立つ。年初からの世界的な株安もあって、G20が協調して財政出動することを求める声が金融市場でも高まっている。

 しかし、各国とも財政に余裕があるわけではない。リーマン・ショック後に膨らませた財政のツケをいまだに支払っている段階だ。米国では債務上限問題が解決されたわけではなく、欧州も南欧諸国を中心とした債務問題の根本治療には時間がかかる。中国は4兆元投資の後始末に苦しんでいる。

 G7各国の政府債務残高(一般政府ベース、OECD調べ)は対GDP(国内総生産)比で、2000年に平均80%だったが、15年には125%に上昇している。

 しかも多くの国では、国債を中央銀行が買って金利上昇を押えるという決して健全とはいえない状態だ。多額の財政出動にもかかわらず成長率の伸びは鈍く、生産性も低下している。

難しい日本の舵取り

 なかでも日本は先進国で最も債務が積み上がっている国だ。15年の日本の債務残高は、GDP比(同)で233%。対外債権と相殺したとしても、借金がなくなるわけではない。社会保障費は膨張し続けており、S&Pによる昨年9月時点の予測では、債権と相殺したネットの一般政府純債務残高の対GDP比は、15年度の128%から18年度には135%に上昇する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、英仏と部隊派遣協議 「1カ月以内に

ワールド

トランプ氏の相互関税、一部発動 全輸入品に一律10

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、2週連続減少=ベーカー

ワールド

台湾の安全保障トップが訪米、トランプ政権と会談のた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中