最新記事

朝鮮半島

北朝鮮核実験と中国のジレンマ──中国は事前に予感していた

2016年1月7日(木)19時36分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 その頃の中国はアメリカにより対中包囲網があり、日韓および当時の中華民国がそろってアメリカと緊密な関係にある中、北の旧ソ連とも対立していた。

 まさに四面楚歌である。朝鮮戦争で中国人民志願軍を組織して北朝鮮を応援し、アメリカを中心とした連合国軍に苦戦を強いた。このときアメリカが日本に落としたのと同じように、中国にも原爆を落とすかもしれないという情報も取りざたされていた。

 そこで中国建国の父、毛沢東が思いついたのは原子爆弾の実験である。

 1964年に新疆ウイグル地区で初の核実験に成功し、1967年には初の水爆実験にも成功している。

 中国はその経験から北朝鮮の現状を分析し、60年代の中国と同じ状況にあると言っている。

 つまり日韓あるいは米韓軍事演習が頻繁に北朝鮮の周辺で起き、中国との関係も冷え切っている中で、北朝鮮が軍事的に生き残っていくための唯一の道は「核実験」しかないというのが、中国の北朝鮮に対する見方だ。巨大な軍事力を保有するには膨大な経費が掛かるが、核実験には、それほどの経費が掛からないだけでなく、水爆実験ともなれば絶大な効果をもたらし、まわりに脅威を与えることができると思っているのだという。

 だから中国は、あらゆる側面から「北朝鮮の水爆実験」の可能性を予測していたとのことである。

経済支援を止めれば北は一瞬で滅ぶのだが......「唇なければ、歯寒し」

 中国は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)建国以来、軍事的にも経済的にも北朝鮮を支援してきた。朝鮮戦争(1950年〜1953年)においては軍事的に支援し、1992年の中韓国交正常化以来は経済的支援を加速させざるを得なかった。韓国は北朝鮮にとっては、「まだ戦争が終わっていない最大の敵国」で、その韓国と国交を正常化した中国が許せず、「それなら台湾と国交正常化してやる!」と北朝鮮が激怒した事実は有名だ。結果、経済支援を増やし、今もなお石油や食料など、北の生活を支え続けている。

「あの若造のならず者が! 中国が油と食糧をストップさせれば、北朝鮮など1,2日もしないで餓死してしまう。一瞬で崩壊するだろう」と取材した中国政府関係者はいまいましく吐き捨てた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米連邦政府職員数が10年ぶり低水準、トランプ氏の縮

ビジネス

中国12月CPI、3年ぶり高い伸び PPI下落鈍化

ビジネス

中国AI企業ミニマックスが香港上場、株価50%高

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ野党指導者マチャド氏と来週面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中