最新記事

中国

ネット世界「地球村」で孤立する「紅い皇帝」――第二回世界インターネット大会

2015年12月17日(木)19時27分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 以上、10名のトップ級参加者の名前を連ねてから、ようやく「さて、ご来賓の皆さま」に入った。こんな光景は見たことがない。列挙した名前が、「これで最高ランク」だったことは、かえって世界インターネット大会の権威のなさを浮き彫りにし、中国がいかに「世界の言論界」で孤立しているかを露呈した。

 フロアーには「シラー」とした空気が流れ、熱気が見られない。

各国には「ネット主権」がある――イデオロギー担当の劉雲山が司会

 それもネットビジネスに話を絞るのであれば、事態は違っただろう。中国側発表で2000人からなるという参加者は、ほとんどがビジネスマンだ。

 しかし習近平演説で最初に触れたのは「ネット主権」だった。彼は概ね、つぎのように語った:

――13億人の民を誇る中国は、6.7億人という世界最大のネット人口を擁している。国連憲章にも謳われている通り、どの国にも同等の主権原則があるが、これはネット空間においても適用される。われわれは互いに各国が自主的に推し進めるネット管理方式を尊重し、国際ネット空間における統治権を互いに認め合わなければならない。他国の内政に干渉したり、他国の国家安全に危害を与えるようなことをしてはならない。

 まるで、言論統制をしている中国に対する国際社会の批判に釘を刺すような冒頭の言葉だ。それを耳にした参加者の間には、またもや「シラー」っという音が聞こえるような「音のないさざめき」が走った。フロアーの人の眼が笑っていない。

 つぎに「われわれは法に基づいてネット空間を管理しており、現実社会同様、自由を提唱して秩序を保っている。自由は秩序の目的であり、秩序は自由の保障である」などと述べたが、そのような空々しいことを言われても、世界中の人は中国の言論弾圧を知っており、「万里防火壁(万里のファイアーウォール)」で海外からの「有害情報」を遮断しているのを知っている。

 あとは推(お)して知るべし。

 5つの原則(世界ネットインフラ建設、ネット上に文化交流プラットホーム構築、ネット経済の核心的発展、サイバーセキュリティーを保障しサイバー空間の軍拡競争に反対、ネットガバナンス体系構築)などが列挙されたが、フロアーが明るく活気づくことはなかった。

 AIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路(陸と海の新シルクロード)などにより世界を制覇しようとしている「紅い皇帝」の面目は丸つぶれである。

 それもそのはず。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中