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南シナ海領有権拡大に突き進む中国の危険な火遊び
日本ばかりでなくマレーシアやフィリピンにも強引に領有権を主張し、米軍艦も蹴散らす中国の「度胸試し」戦略
覇権主義 中国は南シナ海の大半を実効支配しようとしている Guang Niu-Reuters
周辺国を挑発しながら支配海域の拡大を狙う中国の「度胸試し」が過激さを増している。先週、マレーシアから80キロほどの位置にある南シナ海のジェームズ礁(中国名・曽母暗礁)で、あるセレモニーが行われた。中国海軍の艦艇3隻が、この海域の主権を宣言する「主権宣誓活動」を実施したのだ。
中国は石油や天然ガスが豊富に眠る南シナ海の地図上に「九段線」と呼ばれる9本の線を引き、南シナ海の大半について領有権を主張している。ジェームズ礁も九段線の内側に位置するが、同じく領有権を主張してきたマレーシアは、近隣に海軍基地を建設して対抗する構えだ。
ジェームズ礁での宣誓式は、中国が推し進める領有権拡大戦略の一端にすぎない。中国が日中対立の火種である尖閣諸島(中国名・釣魚島)を含む東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設定したのは昨年11月。中国はその後、偵察機によるこの空域の飛行を繰り返している。
昨年12月には南シナ海の公海上で、中国海軍の艦船が米海軍の巡洋艦の航路を妨害。衝突を避けるため、米軍側は緊急回避行動を取らざるを得なかった。
さらに先月、中国南端に位置する海南省が南シナ海の200万平方キロの海域で操業する「すべての外国人と外国漁船」に対し、中国当局の許可を得るよう義務付けた。ベトナムやフィリピンとの領有権争いが深刻化している海域も含まれており、近隣諸国は猛反発している。
今のところ、こうした対立が軍事衝突に発展したり、中国が領有権を公式に握る事態には至っていない。とはいえ、挑発を繰り返して既成事実を積み重ねる中国の手腕は実に巧妙で、着実に成果を挙げている。
その影響を受けるのは周辺諸国だけではない。南シナ海は国際貿易における重要な輸送ルートであり、中国の実効支配下に置かれれば影響は大きい。アメリカにとってはタイや韓国、日本、フィリピン、オーストラリアといった同盟国の軍事に関わる問題でもある。
だが軍事衝突を避けるとすれば、アメリカの選択肢は限られている。特に日中の対立緩和に向けてできることは多くない。「日中両国がメンツを保ちながら引き下がるのは困難だ」と、日中関係に詳しい香港大学の張維良(チャン・ウエイリアン)は言う。その方法を見つけなければ、中国の危険な火遊びはエスカレートする一方だが。
[2014年2月11日号掲載]