最新記事

犯罪

美少女CGに釣られた児童性愛者たち

世界中から2万人の男たちが殺到したオンライン買春の実情を告発

2013年11月20日(水)15時54分
パラシュ・ゴシュ

「囮」捜査 児童保護団体が制作した架空の少女「スウィーティー」 Courtesy Terre des Hommes

 世界中の児童性愛者が、オランダのあるNGOが仕掛けたネット上の罠にまんまとはまった。彼らが性的欲望を向けた相手は、10歳のフィリピン人少女。ただし生身の人間ではない。本物そっくりに作られたCGだ。

 児童保護団体テール・デゾム(TDH)はこのCGを「スウィーティー」と名付け、偽のプロフィールをあるウェブサイトで公開した。BBCによると、世界中から「彼女」に接触してきた男たちは約2万人。そのうち約1000人は金銭と引き換えに、オンラインでの性的行為を持ち掛けた。TDHはSNSの情報などから彼らの身元を特定。警察当局に通報した。

「向こうから話を持ち掛けてくるまで、こちらは何もしなかった」と、プロジェクトリーダーのハンス・グイトはハーグで開いた記者会見で述べた。「(児童を狙ったネット上の性犯罪には)新しい取り締まり策が必要だ。犯罪者が自分の名前を出すことはないし、被害者が名乗り出ることもない」

 ウェブカメラを使ったネット上の「セックスツーリズム」の撲滅を目指すTDHは、途上国の児童に豊かな国の男たちがネット上で接触する様子を記録したという動画をYouTubeに公開している。

 児童性愛者はクレジットカードをちらつかせ、子供に服を脱ぐよう指示したり、性的行為を要求したりする。

 TDHによれば、ネット上の児童買春は明らかに違法だが、これまでに有罪判決を受けた児童性愛者は6人しかいない。「各国政府は積極的な予防的捜査に力を入れてほしい」と、グイトは言う。

「最大の問題は、被害者の届け出がないと警察が動かないことだ。子供たちが被害届を出すことはまずない。被害者は通常、周囲の大人に強制されて(児童性愛者の相手を)しているか、極端な貧困のせいで仕方なくやっているかのどちらかだ」

 TDHが「スウィーティー」をフィリピン人にしたのは、同国だけで数万人の子供がオンライン児童買春の犠牲になっているからだ。ネット上では、常時75万人前後の児童性愛者が獲物を探しているという。

 その犠牲になる子供は今後さらに増え続けると、TDHは警告する。かつてネットの普及は貧しい国々に福音をもたらすと言われていた。それを考えると、何とも皮肉な話だ。

[2013年11月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ

ワールド

ジャカルタのモスクで爆発、数十人負傷 容疑者は17

ビジネス

世界の食料価格、10月は2カ月連続下落 供給拡大で

ビジネス

ホンダ、半導体不足打撃で通期予想を下方修正 四輪販
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中