最新記事

リビア

カダフィ女性親衛隊は性の奴隷だった

独裁者父子に忠誠を誓わされた女性ボディーガードたちの悲惨な実情が明るみに

2011年8月30日(火)18時15分

ハーレム状態 銃撃されたカダフィを守って命を落とした親衛隊員もいる(2010年) Tony Gentile-Reuters

 リビアのムアマル・カダフィ大佐は1970年初頭からずっと、その勇猛さから「アマゾニアン」と呼ばれる女性親衛隊に身辺を警護させてきた。だが、カダフィ政権の崩壊が着々と進む中、かつてアマゾニアンのメンバーだった5人の女性から、カダフィ父子にレイプされたとの告発が飛び出した。

 イタリアのマルタ・サンデー・タイムズ紙の報道によれば、5人はカダフィとその息子たちにレイプや虐待行為を受け、彼らが「飽きる」と捨てられた、とベンガジ在住の心理学者セハム・セルゲワに語ったという。国際刑事裁判所はカダフィと次男サイフ・アルイスラムを含む幹部らに「民間人の殺害及び迫害という人道に対する罪を犯した容疑」で逮捕状を出しており、セルゲワは裁判資料となる可能性を考えて、5人の聞き取り調査を行ったという。

 ある女性は、麻薬密輸の濡れ衣を着せられて拘束された兄弟を投獄すると脅迫されて親衛隊に加わった。「彼女たちの話から、あるパターンが浮かび上がる」と、マルタ・サンデー・タイムズは書いている。「女性はまずカダフィにレイプされる。その後、中古品のように息子たちや政府高官に回されて、さらなる虐待を受け、最後に捨てられる」

 セルゲワは、一連の内戦の最中に起きたとされる政府軍兵士らによる集団レイプ疑惑についても調査している。

母親も爆弾で殺人マシン

 迷彩服に身を包み、マニキュアとマスカラをたっぷり塗った30人ほどの女性親衛隊は、カダフィに忠誠を誓い、処女まで捧げるという。彼女たちはカダフィに常に付き添い、時には盾となって独裁者を守る。1998年にカダフィが銃撃された際には、親衛隊の1人が死亡、2人が負傷した。

 6月にはカダフィ政権の支持者らが、反体制派との戦闘に備えて女性兵士に訓練を施していると明かした。英ガーディアン紙によれば、あらゆる年代の女性500人が、武器の使い方を学ぶプログラムを修了したという。

「リビアの女性は今や、NATO(北大西洋条約機構)との戦闘にも参加している。我々が彼女たちを訓練した。彼女たちの主要な役割は自宅を守ることであり、前線に送るつもりはないが」と、リビア政府の報道官モウサ・イブラヒムはガーディアン紙に語った。「愛と創造の象徴である母親の一人ひとりが爆弾であり、殺人マシンなのだ」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中