「飛行禁止区域」で虐殺を止められるか
この作戦はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争には適していた。当時、ほぼすべての固定翼航空機が、片方の勢力(セルビア人)に支配されていたからだ。ボスニア・ヘルツェゴビナの都市バニャルカ上空にセルビア人勢力の6機が侵入した際には、米空軍のF-16戦闘機がこれらを撃ち落とした。
それでも飛行阻止作戦の効果には疑問が残る。NATO(北大西洋条約機構)に言わせれば、セルビア人勢力から空軍力を奪ったこの作戦が、ボスニア紛争を早期終結に導いたことになる。一方で、飛行阻止作戦は「スレブレニツァの虐殺(イスラム教徒7000人以上が殺害された)」などボスニア紛争の人道危機をほとんど防げなかったと主張する声もある。飛行禁止作戦はその後、NATO軍による空爆作戦へと拡大されていった。
国連安保理の支持は得られない
今回のリビアの場合、リビアに近いイタリアが飛行禁止作戦のための軍事基地の提供を示唆している。イタリアには米軍の空軍基地もある。米空母はリビア沖にも待機しており、今後の軍事行動の可能性に「柔軟な対応」ができると米国防総省の報道官は言う。
リビア上空に飛行禁止区域を設置する際の最大の障害は、軍事的なものではなく政治的なものだろう。複数の国連外交筋は口をそろえて、リビア空軍による爆撃がよほど激化しない限りは国連安保理15カ国から飛行禁止区域設置への支持は得られないだろうと語る。さらに、今回はアメリカやその同盟国が安保理の支持なく単独で行動する気配もない。
飛行禁止区域を設けても、カダフィ軍や傭兵が地上で殺戮を繰り広げれば防げない。やはりその効果に限界があることを考えると、アメリカとその同盟国は、本当にいま飛行禁止区域を設置する意味があるのか、じっくり検討すべきだろう。
Reprinted with permission from www.ForeignPolicy.com, 3/2011. © 2011 by The Washington Post Company.